第2話 事件のにおい
「編集長、ここ最近面白い事件があるんですよ。」
「ほう、どんな事件かね、秋山くん。」
「ここ最近、行方不明の事件が多発してるじゃないですか。それがどうやら、トアルサイトが原因のようでして。」
「ふむ、なるほど。それを記事にしようと。」
「さすが、編集長。話が早いです。」
「駄目だ。」
「え?」
「そんな、不謹慎な記事を載せてどうするっていうんだ。私達の雑誌の評判が落ちたら、どう責任を取るというんだ。」
「いえ、恐らくそこそこ話題に...」
「いいから、なしだ。他の記事にしなさい。」
「はい...」
なんで、あんなふうに言われなきゃいけないんだ。よし、腹いせにそのサイトに編集長の名前を書いてやれ。そうしよう。
夜、家に帰って自分のパソコンを開き、そのサイトを調べた。これだこれだ。そのサイトは背景が一面真っ黒で、赤文字で「ようこそ」と書かれていて、検索欄があった。
検索欄に編集長の名前である中谷創一郎を打ち込んでみた。
「404 Not found」
おいおい、結局ガセネタかよ。そう思って、その晩は寝ることにした。
翌日、いつも通り出版社に出席すると、編集長は来ていなかった。
「なあ、美山さん。今日、編集長って来てないの?」
「ええ、そのようですね。でも、連絡が一切ないんですよ。」
「ふうん。ちょっと編集長に電話かけてみるか。」
「おかけになったお電話をお呼びしましたが、お繋ぎできません。」
電話には出なかった。編集長の家の電話にもかけた。
「もしもし、どちら様ですか?」
「こちら、NKY出版社の秋山と申します。ご主人の編集長いらっしゃいますか?」
「あら、主人はそちらで寝泊まりしてないのですか。」
「え?」
「いえ、昨日は主人は帰ってきてないので、てっきり、そちらで徹夜の作業をしているのかと。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「どうでした?編集長。」
「どうやら、家にすら帰ってないらしい。」
「ええ?それってまずくないですか?」
「うむ、これはもしかして、事件に巻き込まれたりしてるのか?」
「事件...ですか。一体どんな。」
「それは、まだわからないな。とりあえず、警察にでも相談した方がいいのか?」
「おそらく、それは家族の方がすると思いますよ。」
「そうか。」
秋山は自分の行った昨日の行動を思い出した。あの時、サイト自体は「404 Not found」のエラーが、何かしらの意味があるのではと考えていた。
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