第4話 読み手の利便性を考えよう

田中プロジェクトマネージャー(仮名)は、ホワイトボードを前に、大きく文字を書いた。


「カクヨムの価値最大化=KADOKAWAエンタメ収益=コンテンツ人気


 =コンテンツの読者PV最大化=コンテンツ×評価システム」


まるで、どこかのコンサルが書いたような文書だが(実際、社内に入ったコンサルが書いた提案書の一部を田中PMが憶えていた)、システム開発に関わる人間にも、目標を共有して欲しかったのだ。


「今の現状を整理しよう。コンテンツの収集は、企画部門のコンテスト実施や、大手レーベルとの連携で人気作家から定期連載を獲得するなどで、非常に上手く行っていると言えるだろう。経営陣も、高く評価している」


そこで、少し息を整えて全員を見回す。全員が、プロジェクトをうまくローンチさせた誇りに満ちた、充実感のある顔をしている。

これなら、次の課題も乗り越えられるだろう。


「だが、読者目線からすると多くの改善が目立つようだ。検索性の低さ、トップ画面に表れる作品の混雑、フォントの改善など、いろいろある。


だが、読者の声をまとめると、良いものを楽に読みたい、ということに尽きる。


良いものとは何か。埋もれている良いものを見逃さないためにどうしたら良いか。

このためには、ピラミッド状の検索体系が必要だと私は考える。」


ここで、山田さん(仮名)が手を挙げて質問する。


「田中さん、ピラミッド状の検索対けってなんですか?検索は検索エンジンで一つですよね?」


なるほど。システムと体系が一緒に聞こえるのか。

これは、別の例で説明しよう。


「山田さん、スポーツは見る?サッカーとか?」


「見ます見ます!私、内田選手のファンなんです!」


「ブンデスリーガか。プレミアリーグは見る?」


「あ、岡崎選手ですね。柴犬っぽくて可愛いですよね」


「その岡崎選手のいるチームが今、プレミアリーグで旋風を巻き起こしてるんだけど、中心になっている選手は、元は7部の選手だったんだ」


「ええ!7部?ええと、日本のサッカーって、2部ぐらいまでじゃなかったですか?」


「下部はアマチュアなんだ。それで、サッカーの世界では、才能はどこに埋もれているかわからない、下部リーグでも出世していけば、やがてトップリーグで活躍できる、という選手の発掘と育成の仕組みがあるんだ」


「あ、なんとなくわかってきました。今のカクヨムには、レーベル作家というプレミアリーグはあるけれど、その下は一緒くたの競走なんですね」


「そう。平等と言えば聞こえはいいけれど、読者はただの混乱と見るだろう。

これを実力などの順に整理したい。ジャンル別に分けたのは、その意図があったのだけれど、それ以上にコンテンツが集まっている。☆評価だけでは、発見されなかった才能を潰してしまう。

作家にも、身近なレベルの人間と、切磋琢磨する環境を用意しなければ、いずれコンテンツは枯渇してしまう。

読者にも、下部リーグで才能を発見して、それが出世する楽しみを提供したい」


「なるほど、そのための評価体系、言ってみればレベル別のリーグ戦のような仕組みを作りたい、ということですね・・・そんなこと、私達にできるのかなあ?」


「そうだな。大変な仕事だ。だが、幸い時間はある。さて、議論するぞ!」


その日、夜遅くまでKADOKAWAのカクヨム開発室の明かりが消えることはなかった。


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カクヨム開発さん頑張ってくださいね ダイスケ @boukenshaparty1

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