第3話 開発の優先順位を決めよう
「落ち着け、まずはリストを作ろう」
田中PM(仮名)は、開発室を落ち着かせるように、大きな声で言う。
リリース直後の混乱は、よくあることだ。
慌てることじゃない。
「それから、テスト班と開発班の半分は休んで家に帰れ。明日の10時に、改めて対策会議をしよう」
正直なところ、メンバー達の疲労は限界に達していた。
サービスはローンチしてからが長いマラソンの勝負だ。
ここで燃え尽きるわけにはいかない。
田中PMは久しぶりに妻の待つ家に帰宅することにした。
翌朝、出勤してきた田中PMはホワイトボードに
PM10:00~ 開発要望整理Mtg と、大きくペンで書いた。
三々五々に出勤してくるプロジェクトメンバー達。
備え付けのコーヒーマシーンでコーヒーを入れると、田中PMは改めて気合をいれる。
「10時になった。要望を整理するぞ。整理はこちらでするから、大体の要望を順にあげてくれ」
そう言われて山田さん(仮名)は、少しホッとしたように要望をプリントアウトした紙を手の中で並べなおす。
「はい、ええと、一応、私の方でも分類したのであげていきますね
まず、一番多いのが、感想欄を入れてほしい、というものです。気軽に作品についてコメントしたい、レビューだと構えてしまう、ということのようです」
「それは、レビューにカジュアルに書くのではダメなんですか?」
と若手のメンバーが問う。新規開発を嫌うのは当然のことだ。現状の機能で済ませられるものなら済ませたい。
「ええと、はい、どうも作家の方と気軽にやり取りできるような、返信をしたいそうです。この話のあそこはよかった、とか、あのキャラはどうだ、とか」
山田さんが、やや自信なげに返すと、なるほどね、という呟きがメンバー達から漏れる。
「他には?」田中さんが先を言うよう促す。
「はい!ええと、フォントを選択したい、と。今のフォントは見づらいときもあるそうです」
「まあ、それは方針との兼ね合いだが比較的簡単に実装できるな。他は?」
「探しづらいので、毎時ランキングは欲しい、と」
ふうむ。ランダムピックアップ機能は必須だが、評価体系に穴があるのかもしれない。現状、レーベル評価が強すぎて、それ以外の評価が機能していないのか。
「他には?」
会議は続く。
田中PMの苦労は、まだまだ終わらない。
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