第2話 開発要望の嵐に備えよう
リリースは2月29日の午後明るいうちに、とアナウンスをしていたが、システムのテストは予想以上に早く、うまく行った。
田中PM(仮名)は、ゴーの判断を下した。
前倒しのリリース。これには、KADOKAWA側の営業時間に合わせる、という意味もあった。
何かあった場合の対応リソースを考えるならば、早い時間にリリースした方が、対応できる人員と時間が増える。
その英断はTwitter上で待ち構えていた書き手たちにも、驚きとなって伝わった。
「おい、まだ昼前だぞ、なんかトップページ変わってね?」「マジかよw」
という会話が飛び交い、慌ててアクセスするものが続出した。
この日のために通信回線とサーバーは増強してきた。きっと耐えられる。
「どうだ?」と田中PMは、サーバー要員として自ら引っ張ってきた鈴木PG(仮名)に問いかける。
鈴木PGはキーボードを時折り叩いてコマンドを送りながらグラフを見つめ続ける。
「大丈夫そうです」
だが、田中PMの元にサポート要員の山田さん(仮名)の悲鳴が飛び込んできた。
「田中さん!改善要望が山のように来ています!」
まさか。いや、テストは十分にしたハズだ。きっと大丈夫。
だが、現実は田中PMの予想を超えていた。
中でも、田中PMが意表を突かれた意見があった。
・「各話の感想欄がついてない。感想は作家のエネルギーなのに!」
そうか。アマゾンのようなレビュー機能だけではだめなのか。Web小説は連載形式なので、全体レビューがついてよし、というわけにはいかないのだ。
田中PMは作家という生き物の特性を重視していなかった自分に気がついた。見た目のUIには気を使ったが、どのように作家にモチベーションを持たせるかという具体論に、やや疎かったのかもしれない。
「田中さん!他にも機能改善の要望がたくさんきています!」
田中PMの厳しい夜は、まだ始まったばかりだ。
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