力としての、可能性としての存在

本作「ゴーアルター」は英雄の物語ではないだろう、そう私は思うのだ。
何者に為れるかすら分からない、分かりようの無い少年がある日得たのは力。
神にも悪魔にも為れないが、人間には手の余る力は、ただただその可能性である力により登場人物達の人生を狂わせていく。
その物語の集束は、最初に喪った幼馴染の少女の目覚め、非日常から日常への帰還を持って終わる。

自己の模造、自演、鏡合せーーそれが非日常を生んだ産物の全てである。
それは自己と向き合い続ける虚しさとの戦いだ。

この作品に於いて、特筆すべきは未来が見えず翻弄されるただの少年の虚無が、殆ど何も示さないという凡庸さにあるのだーー

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