スゥエーデン式のさようなら

hirayama

第1話

スゥエーデン式のさようなら


  梗概

 東京都では一九九六年、全国で四六番目の「青少年健全育成」に関する条例を制定し、二ヶ月後に施行した。いわゆる「買春〈かいしゅん〉処罰条例」である。都の条例は青少年の性行動全般を「淫行」とせず、「性的自己決定能力」を尊重し、青少年を対象とした買春〈かいしゅん〉の側の大人を罰し、青少年の健全育成を図ろうとする考えに支えられている。そのため、他県の条例が「淫行条例」と言われるのに対し、都の条例は「買春条例」と略称されている。

 こうした中、元小学校長・武田徳治、六七歳は、神奈川県金沢八景署に県条例違反容疑で逮捕された。徳治の自宅は東京の豊島区にある。逮捕されたのは横浜市金沢区に所有するマンション内であった。逮捕したのは水原廣警部補。水原は、都の条例制定にあたり、署長から県の条例との比較検討を命じられた。買春する大人を許せないのは当然だが、売春する子どもも許せない思いの水原にとって、都の条例は不十分なものに思えた。また、水原は親から精神的に独立しようとする年頃の自分の子供たち3との関係に悩んでいた。

 徳治の淫行相手とされたのは、都内の有名私立女子校に通う帰国子女の村木英江〈はなえ〉、一七歳。

 徳治は小学校を定年退職したあと、不登校児童の指導をする教育施設に非常勤で勤めた。そこも六五歳で定年になった。これから老夫婦二人の静かな生活が始まると思った矢先に、妻の栄子が激症肝炎で死亡した。徳治の老後の計画は崩れ去った。杉浦は栄子の入院の際には徳治に頼まれて救急車を迎えに出た。栄子の死から約二年。杉浦は徳治の部屋に出入りする英江の存在に気がつき、「援助交際」ではないかと疑った。PTAで親しい主婦たちも、子供たちへの影響を懸念した。杉浦は交通安全運動などで顔見知りの地元の警察署長に相談することにした。

 こうして、水原警部補が徳治の逮捕に向かい、二人は取り調べを受け、二人の関係が明らかにされる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スゥエーデン式のさようなら hirayama @vrymmto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ