第3話
一国の王女であるラシエだが、政治や国営は兄と父が担っておりラシエは主に勉学や習い事などをして過ごしていた。それ以外の時間は社交性を身につけるために貴族のパーティーに参加したり、書斎にある本を読んだりしていた。
そして、もう一つ。ラシエの従兄でありバムラン王国の王子、ジオナに会いに行くことを父であるセラーギア王国国王、ブルグトルから定期的に頼まれていた。
バムラン王国現国王、ワイジェスとブルグトルは異父兄弟であり、ブルグトルはバムラン王国の復興に献身的であった。
かつて猛威を振るい他の国々を圧倒した影はもうこのバムラン王国にはなく、ラシエの視界にあるのは痛いまでに広がる濃い緑色だった。常盤色、そう名がついているこの色はバムラン王国の国旗にも使われており、長寿や繁栄の願いが込められている。
以前までは特に気に留めなかったが、あの鉄鉱石が発見されてからこの国の人達は運命だと唱えるようになり、鉄鉱石をそして魔法を崇めるようになった。
本当に長寿や繁栄はもたらされ、これからも永久に続く……はずだった。
「ラシエ様、シャルルド様、お越しいただきありがとうございます」
簡素な服を身にまとった二人の付き人が、ラシエとシャルルドに深々と頭を垂れた。
城の裏にありこの国で一番大きい鉱山の麓に、ぽっかりと口を開ける洞窟のような場所があった。そこに人目から隠れるようジオナ王子とその付き人たちはいた。物は何もなく、地に横たわっているジオナ王子の服も身体も濃い緑色に侵されていた。
パンドラ事件。
かつて世界征服を望んだバムラン王国の侵略が行われることはなかった。
バムランの国民は誰しもが『偉大なる幸せ』を手にできると疑わなかった。その傲慢さが小さな変化を見逃し、大きな破滅へと王国を導いてしまったのだ。
最初は鉄鉱石を保管している場所がところどころ濃い緑に変化しているという極わずかな変化だった。発見した者は一応ということで報告したが誰も気に留めず、未知の力なのだからそういうこともあるだろう、と変わらずに鉄鉱石を使い魔法を多用していった。
次第に変化は人の目にも触れていったが、人々はそれすら私たちが勝利する神のお告げだと湧きあがった。
そうしてじわじわと国を蝕む変化は、唐突に終わりをもたらした。
時は色と奇話 R @-x-
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