第2話
昔、ある特定の美しい常盤色をした鉄鉱石を研究していた者たちだけが、次々と不思議な力を手に入れた。
調べを進めていくとその鉄鉱石は特殊な電波を一定量常に放ち続けていることが分かり、それが不思議な力――魔力を目覚めさせた原因だった。その事は世界中に広まり、人々は鉄鉱石を手に入れる為に戦争を始めてしまう。元々鉱山を多く所有していた国々は鉄鉱石を国民に配り、一部の国は全国民から魔力を引き出し子どもさえをも兵として戦争を圧倒した。
鉄鉱石があれば、魔力があれば、幸せを手にできる。
人々はそう信じて疑わなかった。
実際、戦争に勝利した国の民は裕福に暮らし、魔力を駆使してこれまでに無い伝統や技術を編み出していった。
そうして戦争は激化し、魔力のない人々は次々に倒れ、降伏した者たちは地中深くからしか採れないその鉄鉱石を採掘する為の奴隷となっていった。数十とあった国はいつしか三国の配下に下り、三国は一触即発の状況になった。
一つは、鉱山を最も多く所有しほとんどの国民が魔力を手にしたバムラン王国。
一つは、その地理の為に深く攻め込まれることなく、また鉱山を多く有するが故に利益を得て周りの小国を配下に置いていったファブワド王国。
一つは、その知能の高さ故に国民のほとんどが魔力を有さないにも関わらず、戦争を勝ち抜いてきたセラーギア王国。
セラーギア王国は魔力、鉄鉱石、と言うのにいち早く疑問を持っていた。知らないという事は恐ろしいことだと、セラーギア王国の民たちも思っていた為にまずは知る事からだと唱えた。
互いに情報を公表することを含めた条約を掲げ、協定を結ぶことを望んだ。
ファブワド王国はそれに賛成していた。多数の国々を従えることが出来たため、このまま争い続けてももう利益はなく被害が増すだけだと考えていたからだ。
しかしバムラン王国は違った。バムラン王国が望んだのは全てを手にすること、即ち世界征服。
結ばれようとしていた手は分かたれ、戦争は終わらなかった。
…………そう思われた。
そこまで読んで、ラシエは古書を静かに閉じ元の場所へと戻す。ラシエが何かを言う前に、シャルルドが口を開いた。
「……バムラン王国へ向かわれるのですね」
終始背を向けられていたにも関わらず、ラシエの考えていることはもとより、その表情までもシャルルドは想像できた。
いつだってバムラン王国へ行く前は書斎に篭り、絵本を一心不乱に読んでいたのだ。それは戒めであると同時に、ラシエの意思を強くさせるものでもあった。
「従兄に……、ジオナ王子に会おうと思って」
ラシエの絵本を持っている手に力が入る。その脳裏には忘れられない、忘れてはいけないジオナ王子の姿があった。それはシャルルドも同じだったようで、不自然な沈黙が空間を漂う。
「分かりました。それでは――――」
それを払拭するかのようにシャルルドはこれからの予定を確認していった。
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