非常に面白かったのに評価がついてないのでレビューを。
主人公がヒロインに導かれて異世界へ渡る力に目覚めて…という、ちょっと昔のファンタジー小説的な導入から始まる作品。
序盤は特に、主人公の精神的な成長に主眼が置かれ、読んでいるほうは焦れったいかもしれません。異世界レグルノーラの不安定さや在り方が魅力的で、「果てしない物語」など、児童文学に分類されていた名作ファンタジー作品の影響を感じました。
敵や仲間など、脇を固める人々の描写もしっかりしていて、リアリティを感じます。作中での主人公の成長に伴って周囲から向けられる視線が変化していく様子も面白い。
古典の名作ファンタジーにどこか通じる、壮大な神話的物語を語ろうという気概を感じます。ぜひご一読を
現実世界と異世界「レグルノーラ」を行き来する能力を持つ「干渉者」――クラスメイトの美少女・美桜に導かれ、自分が「干渉者」であると知った主人公・凌。
凌は現実とレグルノーラ、二つの世界を行き来し、世界に秘められた謎と美桜の抱える過去に向き合っていく。
思念が具現化する世界・レグルノーラで、異能の力を得た凌が、ヒロインとの距離を縮
めつつ、自らの精神的な弱さに立ち向かう。王道のライト・ファンタジーといえるでしょう。
異世界へトリップし異能の力を得る主人公。なにやら大きな力を持っていることをしきりに示唆されますが、このレビュー執筆の段階(波乱の予感3まで投稿済み)では、いわゆるチート的な力は登場しません。それどころか、想像を具現化する力をいまだ十分に扱いかねている状態です。一戦ごとに力の使い方を学び、一歩一歩成長していくさまが描かれます。
能力的な成長とともに、内省的で人付き合いが苦手な主人公の精神的な成長も見られ、主人公の変化とともに周りの人間、特にヒロインとの関係も変わっていきます。
主人公の成長がじっくり描かれる、地に足についた物語。この手の小説はともすれば中だるみしがちですが、戦闘シーンや世界の謎に迫る伏線が適切に挟まれることで、小気味よいテンポが生まれ、さくさく読み進めることができます。
キャラクターはしっかり書き分けられており、主人公・ヒロインだけでなく脇を固めるキャラも魅力的。個人的にお気に入りなのは、学級委員の芝山君。詳しくは書きませんが、最初の印象とはまったく違ったキャラでした。
物語は、主人公が二つの世界を渡る異能者として本格的に覚醒し、仲間も増え、さらなる展開を迎えようとしているところ。今後の更新に期待です。
ひょんなことから干渉者として現実世界の裏にある灰色の世界『レグルノーラ』を行き来することができるようになってしまった主人公。彼は、その裏の世界をミステリアスなヒロイン、芳野美桜と行き来することになるのだが――
近未来と近代のヨーロッパが融合したような灰色の異世界『レグルノーラ』の世界観が何とも魅力的な作品です。
ライトノベルというよりライト文芸とも言える作風で、80年代から90年代に流行った古き良き日のラノベの黎明期を彷彿とさせる小説でした。
本編もどこか乾いているのだけれど、ノスタルジックで吸い込まれる不思議な魅力があります。
ちょっと異色な小説を読みたい方にお勧めです。