自分より、上位の価値を他者に見出すこと。
残酷な体験をした子供と、別のそれを救えなかったという自責の念を持ち続ける若者。
出会いが生きる力を与え合い、過去に縛られ前に進む意思すら持てなかった人々が、またいつか必ず会おうと未来を見つめる。
世界は暴力で動いている。
しかし、それを全身全霊で拒否すること。
世界を変えるために、自分の命を使う。
そして、進む道は違えど目的は同じ、支援し応援し合う仲間の存在。
美しく眩しい若き日の誓い。
いつの日か、主人公たちのその後を見たいという思いが抑え難いが、この物語が染み込んだ読者のみんなが、新しい世界に想いを馳せ、やがてはその想いが大きな流れを作り、世界は変わるに違いない。
読者の行動を要請する強い力を持った作品であること。
著者の滝川七央さんの、不屈の意思と限りない苦悩に裏づけされた愛を感じること。
読後、その場限りの感動だけでは済まされない。
出来ることから支援していきたい。
重く、切ない題材の物語で、身につまされるような、胸が痛くなったりする場面もあるのですが、不思議とすいすい読み進められました。それは主人公が、決してスーパーヒーローではない等身大な普通の若者でありながらも、様々な葛藤を経ながら正義感を発揮して愛する者を救おうとする様が、感情移入をするのに絶妙なバランスで描かれていたからだと思います。何と言うか、自己を投影するのに丁度良い感じなんです。
また、主人公の愛情の対象となる人物が愛おしかったし、周りの協力者が実に頼もしく、魅力的だったのもそれに寄与しています。