概要
👗15分後、Jアラートが鳴る。午前3時、彼はそう言い切った。
午前3時、腕時計が震えた。画面に浮かんだのは、遠く筑波にいるはずの恋人・明彦の名前。しかも、メッセージではなく音声通話だった。時間も考えずに何事かと、直美は苛立ちながら電話に出る。
「今すぐ、iPhoneの衛星通信をオンにしろ。窓も、ドアも、玄関も全部開けろ。緊急持ち出し袋をテーブルに出して、十五分待て」
横浜のマンションで眠っていた直美は、わけも分からぬまま、不機嫌に言い返す。けれど受話器の向こうの声は、いつもの軽口ではなかった。
「15分以内に、あのJアラートが鳴る。南海トラフだ」
明彦がいるのは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のモニタールーム。光に近い速さで周回する電子と陽電子のビームが、地面のわずかな伸び縮みを、地震計よりも早く、静かに拾っていた。過去に観測した遠い地震
「今すぐ、iPhoneの衛星通信をオンにしろ。窓も、ドアも、玄関も全部開けろ。緊急持ち出し袋をテーブルに出して、十五分待て」
横浜のマンションで眠っていた直美は、わけも分からぬまま、不機嫌に言い返す。けれど受話器の向こうの声は、いつもの軽口ではなかった。
「15分以内に、あのJアラートが鳴る。南海トラフだ」
明彦がいるのは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のモニタールーム。光に近い速さで周回する電子と陽電子のビームが、地面のわずかな伸び縮みを、地震計よりも早く、静かに拾っていた。過去に観測した遠い地震