概要
すみません、店があるので。雑貨店を閉める女と値段をつけない古本屋の話。
商店街のいちばん奥に、四季堂という古本屋がある。
三十一冊の本を手放しに来た燈が、朝の店番を始めて一か月。夕方の悠斗とは顔を合わせないまま、二人は帳場のメモ用紙だけでやりとりを続けている。
同じ通りの入口には、十年続いた小さな雑貨店がある。
店主の藤村梓、三十八歳。売上も在庫も全部、数字で言える人だ。その梓が、店を閉めると決めた。閉店の貼り紙に使う大きい紙が、店に一枚もない。それで、十年いちども入ったことのなかった四季堂の引き戸を開けた。
「十年で、いちばん長く置いてたものって、なんですか」
二千百四十点すべてに値段をつけてきた人が、一つだけ値段をつけられずにいたものの話。
『たからものの定価』第二章、梓編。
三十一冊の本を手放しに来た燈が、朝の店番を始めて一か月。夕方の悠斗とは顔を合わせないまま、二人は帳場のメモ用紙だけでやりとりを続けている。
同じ通りの入口には、十年続いた小さな雑貨店がある。
店主の藤村梓、三十八歳。売上も在庫も全部、数字で言える人だ。その梓が、店を閉めると決めた。閉店の貼り紙に使う大きい紙が、店に一枚もない。それで、十年いちども入ったことのなかった四季堂の引き戸を開けた。
「十年で、いちばん長く置いてたものって、なんですか」
二千百四十点すべてに値段をつけてきた人が、一つだけ値段をつけられずにいたものの話。
『たからものの定価』第二章、梓編。
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