概要
みんなが休憩所へとむかう流れを抜けて、わたしは一人、工場の裏にある倉庫へと向かうのでした。
ひそやかな悦楽を求めて――。
「カクヨムお題チャレンジ(KOC)2026秋」第1回「機械」、および、柴田恭太朗様主催の自主企画『三題噺 #165』(お題「布」「学」「倉庫」)の参加作品です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!輪廻はベルトコンベアに乗って
とある解体工場の日常を描いた短編です。
ベルトコンベアが流れる工場内でたんたんと働く工員たち。その足並みを乱すものは、くびになります。ベルトコンベアの動きを止めてはならないのですから。
工員たちはベルトコンベアに載せられてやって来る不用品をひたすら解体していきます。そこにはさまざまなモノが載せられているようです。解体工場であるからには、解体されたモノは新たな有用品へと生まれ変わるのでしょう。そして不要になれば、また解体されるのでしょう。幾度でも、この解体工場で。
なかには、密かにリサイクルの輪から外れる、あるいは異なるサイクルに載せられるモノもあるようです。輪廻の輪からはじき出されたモ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!無機質な闇は心を飲みこむ
作業も休憩も厳密に管理された解体工場。そこでは、恐ろしい監視者の存在が無機質な空気を作り上げていました。
そんな解体工場で働く「しらぎく」は、休憩時間にこっそりと倉庫へ行き、秘めた心を解放します。
しかしそれは、この解体工場において禁忌といえるものでした。
しらぎくが心を解放する様子は、とても耽美に感じられました。
しかしここは楽しい場所ではありません。解体工場を満たす空気の非情さを目の当たりにすることになります。
読後感を例えるなら、梅雨時にじーっと窓の外を眺めているときの感傷的な気持ち、という感じでしょうか。
ぜひこのしとしと感を味わってみてください! - ★★★ Excellent!!!その病気(エラー)に思わず、ぞわ、ぞわわ
倒錯した性的嗜好って、思わず距離を取りたくなるほど狂気じみているにもかかわらず、一部に理解ができるような怪しい魅力も携えていて、不安に駆られるというのに目が離せなくなってしまいます。
本作はそんな倒錯具合を煮詰めたような、怪しさ満点の魅力的グロテスクが詰まっており、読むほどに真に迫るような、ぞわぞわした不快な感覚が味わえることでしょう。
こういう「不気味で理解しがたい、でも少し理解できてしまいそうになる」という絶妙なバランスがまた大変素晴らしい。
つまりは「共感」というものに異質なものをぶつけ、認識を塗り替えようとしているわけですからね。
拒絶反応からくる不快感は、相応に強く、より深いもの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!無機質なディストピア世界にほのかな光を宿すそれは禁断の感情
美しい文体と優れた描写によって広がっていくどこか異様な世界観。
その中でしらぎくは淡々と過酷な業務をこなしつつも自分の中に芽生えているちょっとした異常を否認、あるいは隠蔽しようとしている。
その意味は物語が進むにつれ明らかになり、やがて破滅へと進んでいく。
この作品は優れた叙述トリックであり、また無機質なディストピア世界とそこに息づくあまりにも痛切で美しい感情のコントラストが強烈な余韻を残すSF短編作品です。
冷たい金属と柔らかい白布の質感、そして滅びゆくものの美学に浸りたい読者にぜひ一読をおすすめしたい傑作です。