息子が明確に「変わった」のではなく、父親を観察するようになった、この一文で単なる恐怖ではなく、一気に不穏な雰囲気をまといます。笑い方、首を傾ける癖、驚いた時の目――息子が父親を見て、それを覚えたように振る舞う描写が、親子の微笑ましい「似てきた」という言葉を少しずつ不気味なものに変えていきます。しかも息子は何年経っても普通に成長している。その平穏さの中で最後の「観察が終わったら、俺はどうなるんだろうな」が残します。
息子が父親に似る。似てくる。だんだんと。成長を実感します。とても微笑ましい、喜ばしいことです。普通なら。本作の父親と息子も。似てきたのでしょう、きっと。山でほんの少し、奇妙な体験をしただけで。親子の日常風景が、ジリジリちがって見えてくる。ボディブローのように効いてくる、ジワジワと来る違和感・恐怖。「べつに」「なんでもない」。作中にある言葉が頭に残ります。削ぎ落とされた文章を音読しながら、余韻に震えたい怪談ホラー。ぜひお読みいただきたい作品です。
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