概要
「恐怖の涙だ」――いいえ魔王様、それは嬉し泣きです。
魔王ヴェルドは、本気だった。
父のように焼き尽くすのではなく、奪い続けられる支配を築く。そのために単身で乗りこんだのは、飢えた辺境の村ハルム。
倉を接収し、麦を貸し付け、税を課し、逆らう者を排除する。
だが、村人は泣いて喜んだ。
「恐怖の涙だ」と魔王は帳面に記す。「支配は順調である」
部下の清書が条文を書き換え、村の言い伝えが名を取り違え、忠実すぎる四天王が善行を実行する。
支配の一手はすべて善政に変わり、村は栄え、人は増え、隣の村までが従い始めた。教会は聖人を探し、領主は聖騎士に怯え、勇者は協力を願い出る。
それでも、魔王の帳面の征服率は――0%のままである。
「回収が済んでいないだけだ。計画どおりだ」
誤解されていることに、本人だけが最後まで気づかない。
辺境の
父のように焼き尽くすのではなく、奪い続けられる支配を築く。そのために単身で乗りこんだのは、飢えた辺境の村ハルム。
倉を接収し、麦を貸し付け、税を課し、逆らう者を排除する。
だが、村人は泣いて喜んだ。
「恐怖の涙だ」と魔王は帳面に記す。「支配は順調である」
部下の清書が条文を書き換え、村の言い伝えが名を取り違え、忠実すぎる四天王が善行を実行する。
支配の一手はすべて善政に変わり、村は栄え、人は増え、隣の村までが従い始めた。教会は聖人を探し、領主は聖騎士に怯え、勇者は協力を願い出る。
それでも、魔王の帳面の征服率は――0%のままである。
「回収が済んでいないだけだ。計画どおりだ」
誤解されていることに、本人だけが最後まで気づかない。
辺境の