顔の左半分がパンパンに腫れ上がっている。
アンパンマンハーフサイズといったところか。
首から噴き出す膿の量も格段に増えているし、
おそらくは左下顎の腫瘍が活性化しているのだろう。
二ヶ月に渡る抗ガン剤と放射線の併用治療も効果が無かったのかも知れない。
結構ツラかったのを頑張ったのだがな。
まあ下顎以外の二箇所の転移が消滅しているのなら無意味ではないのだろうが、
この辺はCTスキャンで撮影してみないとわからない。
前回の手術からもうすぐ一年が経つ。
もう一年と言うべきか、まだ一年と言うべきか。
このたった一年間にあったことを思い出すのは難しい。
それどころか、あまりにめまぐるしすぎて他人事のように思えてしまう。
とにかく延々と病院に通ったことと入院したことしか覚えていない。
まったくガンとは厄介な病気である。
患者本人の頑張りはあまり意味をなさない。
かかるかどうかは運次第、そして治るかどうかもまた。
もちろん運を引き寄せるには頑張り続けなければならんのだけれど、
いつまで経っても何ら前進も進展もないとなると、いい加減心が折れそうだ。
いま死ぬつもりはない。まだ死にたくはない。
ただ、ガンにならなくともいずれ人は死ぬのだ、
ならばこの「死にたくない」という思いは贅沢なワガママなのかも知れない。
などと考えはすれど、それでもやっぱり死にたくはない。
だからもう少し頑張ってみよう。あと少し、ほんのしばらく。
存外にしぶとかったりする可能性に賭けて。