七月十九日の早朝。体が動かず目が覚めた。
また腰である。しかも前回より激痛、腰が一ミリも持ち上がらない。
尿意が襲ってきたがいまはそれどころではないのだ、
それに一回くらいはオムツが支えてくれるだろう。
基本的に腰痛は時間薬であるから、
何時間かじっとしていればいずれは動けるようになるはずだ。
しかし苦行層でもあるまいに、そうそう何時間も身体の姿勢を固定できない。
七転八倒しながら何とか動けないものか探っていると、
本日二回目の尿意がやってきた。
私の使っている紙おむつには「五回までセーフ」的な謳い文句が書いてある。
以前から「たぶん無理だろうな」とは思っていたが、
そこはそれ、追い詰められた人間が微かな期待を抱いていると、
結果的にはやっぱり無理だった。
「宣伝文句を一瞬でも信じるなど」平賀源内が草葉の陰で大笑いしているかも。
だがそのかいあってか身体は少しだけ動くようになった。
こうなればやるべきことは限られている。
玄関の鍵を開けること、おむつを履き替え服を着て、
そして救急車の手配である。
(以下次回へ続く)