引き続きネタバレ全開、自分語り全開でお届けします。そういったものを許容できる方のみどうぞ。
今回は魔王や妖精王、《真龍》など。
★大魔王マイゼス=インスラ
章ボス。レイドボス的な、ちょっとあの時点で単独では太刀打ちできない存在のイメージ。
《真なる異端》に片足を突っ込んだ《信業遣い》にして、魔王の冠持ちにして、《真なる遺物》持ち。まいった、ちょっと勝てない。
ユヴォーシュ、ロジェス、ヒウィラ、誰が欠けても勝てない敵として盛った結果すごいことになっちゃったお方です。《澱の天道》は後に予定していた聖剣の予行演習の意味も含めての性能でした。同意がなくても取り込める《澱の天道》に対して、同意が必須だけどその分性能を引き出せる聖剣という感じです。
彼やアムラ・ガラーディオ・カヴラウ=アディケードのように、魔王というものは名前の末尾に己の世界の名をつけて名乗ります。これは他の魔王に対して、あるいは魔族に対して「自分こそがこの《魔界》の正統にして唯一の統治者なるぞ」と示すためのもので、これがないと怖気づいたとみなされ、他の魔王に寄ってたかって潰される程度には強力な慣習です。
マイゼスから「=インスラ」を取ると残るのはマイゼスのみ。彼は孤児であり、その身体的特徴から迫害すら受けていました。そこから《魔界》インスラに絶望し、憎悪し、いつしか滅ぼしてやると願うまでに至ります。そうして《信業》に目覚めた彼は己が暮らしていた国の王を殺すとその冠を奪い、堂々と名乗ります───「魔王マイゼス」と。そうして周辺国の魔王が潰しに来るのを返り討ちにし、残らず殺して平定した彼はついに大魔王、真に唯一の統治者となって初めて、「大魔王マイゼス=インスラ」と名乗るようになった、という顛末がありました。
《人界》の劫が廻る条件が《大いなる輪》の廻転であるように、《魔界》の劫が廻るには魔王冠の消滅があります。魔王となってそれを知った彼は《魔界》インスラの消滅を目標に掲げていたため、大魔王となった時点で「あとは死ぬだけ」という状態でした。ほとんど燃え尽きつつも憎い《魔界》インスラの完全消滅のために何か出来ることはないかとあれこれ試行錯誤していた一環にもう一つの《魔界》からの嫁取りがあり、その結果ユヴォーシュらに討たれた彼は果てることになるという流れ。もっとやる気を出していれば、勝っていたのはマイゼスだったことでしょう。
結果として大魔王を喪ったことで、あの戦いのあと、《魔界》インスラは劫が巡って滅んでいます。ユヴォーシュもそこらへんは《暁に吼えるもの》の知識から知りましたが、今さらどうすることもできないし、マイゼスの意志の勝利と考えてそれ以上は考えないようにしています。
精神的不具のユヴォーシュと、肉体的不具のマイゼス。どちらもそれぞれの世界に馴染めなかった者でありながら、スタンスは決定的に違った対比は如何でしたでしょうか。ちなみにプロット時では三本腕ではなく、普通に四本から六本腕があるヘカトンケイル種族の王という設定でした。武器いっぱい持ってることだけ先に決めてたのです。
★アムラ・ガラーディオ・カヴラウ=アディケード
王としては正しいのかもしれないですが、個人としては最悪。
こんなんでも作中外見ランキングトップ5に入ってるのが腹立ちます。
★ウーリーシェン・オモノロゴワ
名前で噛みそうになる登場人物筆頭。
ユヴォーシュが嫌いというのは嘘偽りない本音で、というのも誰も彼もに好かれる主人公ってのも違うなというメタ視点と、彼の過去、スプリール・テメリアンスクをチラ見している経験から近しい気配のユヴォーシュを好きになれないという理由の二点があります。
彼も外見ランキングトップ5入り。脈々と続く王族の血は強い。
実力的にもかなり上位にいる王様。あの時点のユヴォーシュとならいい勝負したんじゃないですかね。悪獣化身とかそこらへんになると厳しいですけど。
★メーコピィ一族(ジーブル、ジニア、ゼオラド)
魔剣を出したい、という発想から生まれた《地妖》の一族。ジーブルが王子という設定は1章時点ではありませんでした。
ユヴォーシュの得物の格を考えたときに、《信業》殺しの黒い刃というものは早い段階からありました。その由縁、力の由来を考えたときに、妖精王の血をひく鍛冶師、かつ《真なる異端》に片足突っ込んでるようなヤツが命を捧げて鍛えたものならさぞや強かろう。ユヴォーシュの魂がないことの伏線にもなるんじゃないか、ヨシ! という流れで生まれたアルルイヤ、実は「ハレルヤ」の別の発音が元になっています。すごい皮肉。
ちなみにジーブルですが、王族として生まれたにも関わらず《信業》が目覚めないことから出奔→《人界》でメリアメルと大恋愛の末に結婚→メリアメルの事故死、直後に《信業》発現。内容は「より強力な武器を鍛えられるようにする」という自己補助→自分と世界に絶望してアルルイヤを鍛え上げ死亡、という流れです。ユヴォーシュとヒウィラにとっての異種婚姻譚の先輩ということになるでしょう。
あと、超巨大《石従》については2章のボスの案の一つでした。魔術師の章にすると決めていた2章、《石従》遣いの魔術師がユヴォーシュを《信業遣い》と知り矜持をかけて挑む、みたいな。ガンゴランゼが生えてきてその展開もなくなったわけですが、せっかくだし5章で使っちゃおう、ということに。ユヴォーシュからしても縁の薄い相手だし、《妖圏》の事情に首突っ込む必要もないしで、決着をつけることなく章エンディングに向かい、そのまま急転直下───というのは決めていましたが、どうだったでしょうか。「えっこれで終わり……えっ? 嘘だろ?」みたいな展開をお届けしたかったのです。
ゼオラドはあのあと、普通に殺されています。《妖圏》基準でも許されない存在と化していたから、止む形なしです。
★《瞬く星》のアセアリオ(と龍族たち)
1章ボス。
彼は龍族としては若いほうで、九大天龍の座を手に入れようとガツガツしている方でした。そのためには力が必要で、力をつけるためには他所から餌を手に入れなければならず、そのために《人界》は探窟都市ディゴールを餌場にした……と、端的に言えば目立ち過ぎたわけです。九大天龍ともなればある程度安定しているので、もっと人里離れた場所に《冥窟》を作って自己を維持していたり。アセアリオのように人目を惹けば、遅かれ早かれ最後は聖究騎士が始末に来るので天龍までは至れなかったでしょう。
1章ではボスを張ったものの、4章、6章では噛ませ犬と化し、最終章では上位存在たる天龍たちが悉く撃墜されたりしましたが、あれはあくまで人形です。《龍界》の龍族たちはそれはもう強いんです。千年単位で自己を拡張し続けた彼らに太刀打ちできるのはそれこそ大魔王級なんです。本当なんだ、嘘じゃない、信じてくれよ! どうしてそんな目で見るんだ!
……失礼、取り乱しました。とはいえ彼らが本領を発揮できていなかったのは事実で、あれやこれや設定があるのもあまり活かせなかったのが後悔ポイントだったり。
二つ名のスタイルを《〇〇する△》という形にしてしまったため、最終章で考えるのに大変苦労したという裏話がございます。
長くなってしまったので一旦このあたりで。
とはいえそろそろ語ることも尽きてきた(気がする)ので、次回で完結予定です。