引き続きネタバレ全開、自分語り全開でお届けします。そういったものを許容できる方のみどうぞ。
今回はヒウィラ、カストラス、聖究騎士たち(一部)。
★ヒウィラ・ウクルメンシル
遅れて出てきたサブヒロイン……に見せかけたユヴォーシュの嫁。ユヴォーシュ視点で描かれる世界において、外見にあまりこだわらない彼のせいで髪色の描写すらないキャラクターばかりのなか、彼女についてだけはやけに詳しく、かつ美辞麗句で表現しているあたり素直な男です。
彼女の美しさについては、作中ブッチぎりの一位と設定されていたり(ただし人族・妖属と魔族の大神同士の対立関係などを抜きにすれば、ですが。作中でも触れられた通り、基本的に人族・妖属⇔魔族は相互に生理的というか本能的に嫌悪しているため、そもそもそういう対象として見ることが稀になります。ユヴォーシュとヒウィラはどちらも異端だったために成立した、本来ありえないカップルなのです)。
彼女の外見レベルに匹敵するのは、前作『C:Htg』の主人公イツキくらいのものです。……逆に影武者とはいえ一国の粋をもって磨かれたお姫様という宝石に素で太刀打ちできるイケメン高校生がヤバい。
話を戻して、ユヴォーシュが一目惚れ、その後ヒウィラが彼の人となりを知って徐々に惹かれていったという順番。最終的に敵をダシにしてイチャイチャしたりしていますが、浮かれ切ってる二人を書くのは楽しかったです。
彼女の生まれ、育ち、経緯と行く先についてもおおむねプロット通り。強いて挙げるなら、本物の姫にするか影武者にするかはギリギリまで悩みました。最終的に後者にしたことでお姫様属性は薄れたわけですが、それでよかったと思っています。地位に惹かれたわけではないし、もしも姫にしていれば流石に魔王アムラが駆け落ちを許さなかったことでしょうから。流石にそこでもう一戦となると……長すぎて……。
《信業遣い》としての素質は割とある方ですが、いかんせん戦闘経験の少なさが響いていました。《真なる異端》まで振り切ってようやく聖究騎士と対等くらいに見えてしまう力量差、ヒロインぽいからいいか。とはいえ守られるだけの女性ではなく、筆者の想定以上にグイグイ戦場に割って入る子でした。
そういえば性格も当初の想定(というか筆者の求める方向性)とは違って、もっとミステリアスで男性を手玉に取るような妖しげな女性のイメージでした。バックグラウンドを詰めるうちに、「あ、これ無理だ」となり、それらしさはユヴォーシュに連れ出されるくらいでなりを潜める始末。早い段階から弱さを曝け出し、それを解消したことでしがらみのないしなやかな強さを得たように思います。最終盤、因縁なんか一コもないのにユヴォーシュのためだけに信庁に喧嘩を売る彼女、いいと思いませんか。筆者は思います。
あとは、筆者の好みの展開なのでユヴォーシュvsヒウィラをもう一回くらいやりたかったな、というのはあります。しかしそういう流れの悉くを潰されてしまい、あとに残ったのはイチャラブばかり。筆者の思惑を超えた二人に幸あれ、と願うばかりであります。
★カストラス
魔術師のおっさん。にして歴史にすら関わってくる超重要人物。
執筆において彼が一番プロットからズレた男と言ってもいい。プロット時点では「不死身の魔術師」というくらいしか情報がなかったのが、いつのまにか神になり損ねた男になっていたのですから。バスティの義体を造れるだけの知識があること、不死身の理由を深掘りした結果、などが原因と思われます。
あとプロットでは3章の同行者の一人でした。別に行っても物語上の役割がないため《人界》でお留守番することになったという経緯。
《大いなる輪》の廻転に伴って《信業》は失っていますが、それはそれとして戦闘経験と不死性、そして研鑽を続けてきた魔術の腕前があるため、並みの神聖騎士くらいなら凌げる程度の腕はあります……が、いかんせん神由来の不死なこともあってかやる気がさっぱりない。
最終章の戦闘も、あれが彼に出せるギリギリのやる気だったのです。古い馴染み相手だからこそ頑張る気になっただけで、そうでなければヘラヘラと傍観者に徹していたことでしょう。
フラフラさせると面倒だからということもあり、本編終了後は《人柱臥処》でシナンシスやかつての仲間と共に安置されています。やるべきこと、やりたいこと、やり残したことをすべて片付けた(と彼は思っている)ため、まあ悔いはないでしょう。カストラス家は……まあ、何とかなるサ!
そういえば小神たちが旅の仲間一行だったという設定は彼とシナンシスの最後の語りの直前まで存在しませんでした。というか小神まわりについてはかなりフワフワしていて、お陰で「暗貌談話」で繰り広げられた小神たちの会合がまるっきり虚空に消えたり。改稿したらなくなります、すみません。
★ディレヒト・グラフベル
ラスボスofラスボス。
《人界》最強の実態は《人界》最強集団を意のままに操れるから、という身もふたもないものですが、やっぱりボスは数を味方に付けてこそ。光を統べるディレヒトとそれに背くユヴォーシュという構造をやりたかったこともあり、聖剣には頑張ってもらいました。
彼の思いの丈については最終章で語り尽くしたと思っているので、ここで語ることはありません。彼の生死が明言されていないのも、この物語がユヴォーシュ視点を主としているため。彼ら二人の間では、決着がつけば生きていても死んでいても関係ないことなので、描写することを避けたのです。
★ロジェス・ナルミエ
大ボス。剣の鬼。
作中の全員で《真なる遺物》も《神血励起》も何もなしに、己の本来の《信業》のみで戦ったら最後まで立っていそうな男。彼の結末もプロットで予定していた通りで、ヒウィラが割り込んできて彼女とユヴォーシュの腕を片方ずつ斬り落とした部分が若干想定と違う程度。全体的に好き勝手して最後の最後だけ望んだ獲物を取り逃す、というのは彼の業なのです。
実は『《光背》のユヴォーシュ』という物語にあって、物語の成立よりも先に構想されていたキャラです。他にそういうヒト・モノはいくつかあって、ユヴォーシュ、魔剣アルルイヤ、《滅びの天球儀》なんかが挙げられたり。あああと、《ファディマスの龍》もそうでした。
《九界》を追放された彼がその後どうなったのか、いつか語る機会もあるといいのですが。
★ニーオリジェラ・シト・ウティナ
ヒロインっぽく出てきた4章の元凶。
3章までは力づくでも比較的何とか出来ていたユヴォーシュの物語に否をつきつけたことで、物語を折り返させた重要キャラ。後にユヴォーシュの存在の瀬戸際でも出てくるなど、前半の象徴のようなキャラと言えましょう。彼女の死で、読者の皆様がたも何となく主人公のハーレムになって終わるタイプの話ではないと察してもらえていれば嬉しいのですが。ああっ離れていかないで、最後まで読んでいって。
行動原理からしてかなりイッちゃってるキャラですが、それもこれもユヴォーシュとかいう妙ちきりんな男と幼馴染をやっていた部分が大きかったり。主人公だけあって大概変なやつだし、罪なやつです。もしかしたらお互い初恋だったのかもしれないですが、そこらへんはあんまり考えていないのでわかりません(きっぱり)。ユヴォーシュたちが通っていた学院についても設定が───ない!
実は彼女の登場あたりまで、神聖騎士の頂点たる聖究騎士……という設定はありませんでした。彼女を出すにあたって超つよい敵を出そうと設定を整理したのです。そこにディレヒトやロジェスを組み込んだ流れ。もっと言うなら九大魔王や九大天龍についてもそうで、《九界》の各世界に存在する九本柱はだから、彼女の登場で建ったということになったり?
彼女とロジェスが《人界》における攻撃力最強です。ぶつかったらどっちが勝つかは……想像したくないなぁ。
★メール=ブラウ・フォシェム
中ボス。最終的に肩を並べて戦うという奇縁。
《信業》を操ることに関しては彼の右に出る者はいません。才能だけならブッチぎり、外見的にも作中トップ5、ただし性格最悪。
美味しいトコ取りを狙うキャラは自作に割といっぱい出がちなのですが、その中でも分かりやすくクソムーブをかましてくれるナイスガイ。根底にある願いと末路まで含めてお気に入りのキャラでもあります。引っ掻き回してくれるという点で動かしやすいのと、技の多さ、適度な強さが秘訣かと。
敵対、少しだけ心を交わし最終決戦で殿を務め戦死まではプロットにありましたが、相手は有象無象の神聖騎士でした。機神ミオトの体内でンバスクと(ほとんど)相討ちという結末は物語を動かしていたら生えてきたもので、そういう妙も味わい深いものです。
ユヴォーシュも彼の死については薄々察していますが、対等な関係として誘って、メール=ブラウの自由意志で参加したのだからと割り切りました。まあ、彼も本望だったでしょうから気にすることではありません。
★ンバスク
中ボス。ユヴォーシュと縁がありつつも、最期は彼と無関係に終わる者。
実は001話から出てきていた(ということになった)人。たかがいち兵士の処刑に聖究騎士3人がかりだったと判明して、筆者の方が「なんでそこまで……」となったところから生まれたのが《真なる異端》の設定……というのは流石に冗談ですが、それにしてもディレヒトが警戒しすぎて笑う。スプリールを考えればまあ自然か。
《真なる異端》がヤバい、神サマにも要注意にされている、というのは一種、より深い世界観の根幹にかかわることなのでここでは語りません。
それよりンバスクですが、彼は孤児です。姓が語られなかったのはそういう理由で、レッサやカリエと同じですね。ジグレードが名乗ってるのはあれ勝手に名乗ってるだけなので公式にはジグレードだけだったり。
《人界》に於いて孤児は姓を名乗れず、結婚すれば相手の姓を貰える、というのが風習です。孤児同士ならば信庁の認可のもと新しい姓を作れるのですが、ここらへんは信庁の権威問題なのでそうそう勝手しちゃいけない。ンバスクは聖究騎士なのもあってそこでルールを破ろうとは考えなかったのです。
ちなみに、プロットではユバスクでした。ユヴォーシュと響きが近すぎるので変わったという裏事情。
4章で彼をぶっ飛ばした、ユヴォーシュの瞳から生えた腕は《暁に吼えるもの》の悪獣化身の腕です。よく死ななかったな。ユヴォーシュが直前にケルヌンノス───悪神の目的担当と遭遇して回線が繋がりかかったことを呼び水として、命の危険にちょっと漏れたかたちになります。
長くなってしまったので一旦このあたりで。
次回は神聖騎士たちの残りになるかと。