「ふむ。ならば、キミの場合はどう名付けるんだ」
どこからか聞こえるミスカの問い。一郎の答えは、決まっていた。
「そりゃあ勿論。この状況の発端になったヤツにかこつけるかな」
「つまり?」
「涼風《スズカゼ》。コイツの名前は、ギガントアーム・スズカゼだ」
一郎がそう宣言した直後。
ギガントアーム・ランバ――もとい、スズカゼの刀身が、呼応するように光った。
そして、爆散した。
「なっ」
言葉を失うジットだが、それは違うとすぐに察した。スズカゼを構成していた巨大な刀身や鍔が、複数のパーツに分かれて四方へと展開したのだ。
パーツは大きく分けて三つ。刀身の上半分、同じく下半分、そして鍔から下である。三部位は青い人型を中心とし、衛星のように浮遊しながら回転。変形を開始する。
まず刀身の上部分。刃というには相当に肉厚だった鋼が展開し、形を変え、現れるのは巨大な上半身。
次いで刀身の下半分。刃というには相当に肉厚だった鋼が展開し、形を変え、現れるのは巨大な上半身。
最後に鍔から下の部位。柄部分が縦二つに分かれ、形を変え、現れるのは巨大な頭部とバックパック。
かくて形を変えた三つのパーツは、再び一つになるべく寄り集まる。その集合点には、当然のように青い人型があり。
「う!」
瞬間、トーリスは目をひそめた。グラウカのカメラの遮光機能によって軽減され、なお強烈にモニタを焼くこの光量。その光の彼方から、響き渡るは鋼の産声。
まず青い人型の腰から下に、スズカゼの巨大な下半身が重なる。魔力が通い、脚部スラスターから光が噴出。
次に青い人型の腰から上に、スズカゼの巨大な上半身が重なる。魔力が通い、五指が拳を握りしめる。
最後に青い人型の頭部に、スズカゼの巨大な頭部が重なる。甲冑でいう面頬に当たるマスクが遮蔽し、額のアンテナが展開。赤いツインアイがぎらと光る。光が収まるまでの数秒間に、これらの変形合体が行われたのだ。
かくて光と入れ替わるように、現れたそのギガントアームの姿を、ジットとトーリスは見た。
◆ ◆ ◆
本編のリンクはこちらです
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561