「え」
と一郎が三回まばたきする間に、三つの事が起きた。
一つ目は、キャプチャーユニットが作り上げた檻の消失。ミスカによる跳躍中バックラー打突破砕。
二つ目は、ジットが一郎へ杖を振りかざした事。魔法行使の予備動作。
そして三つめは、三体のグラウカの内無人の二体がバランスを崩した事。胸部への強打によるノックバック。
「ほー」
トーリスは見ていた。地上。激烈な魔力反応と共に飛び上がったミスカが、まず左手のグラウカへ飛び蹴り。反動をそのままに、今度は右手のグラウカへも飛び蹴り。更にその反動で飛んだミスカは、最後の敵機ことトーリスの眼前へ現れた。
「何も出来ないまま、消えろ」
ミスカがそんな啖呵を切る少し前。一郎は、ジットに釣り上げられていた。
「またかー!」
あぐらをかくような姿勢で、一郎は宙に浮いている。彼を束縛しているのは、ジットの杖先端から放たれた光の網。即ち捕縛魔法であり、グラウカのキャプチャーと同じ代物であった。
これには重力を低減する魔法も含まれているため、ジットでも一郎を軽々と浮かせて運搬できているという訳だ。
「風船になったみたーい!」
「すみません! ですが今はこれしか方法が無かったので!」
「分かるよ! しょうがないよね! てかムチャクチャ足速いねジットくん!」
一郎の言葉は比喩でも冗談でもない。目算だが、時速四十キロくらいは出ているのではなかろうか。
「いや良く見たら足動いてない!? 軽く浮いてる!? ホバーな上にクラフトしておられる!?」
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