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ギガントアーム スズカゼ 第2話 WIP4

 見事な宙返りを一つ打った後、ミスカの右足裏がその側頭部へと直撃した。流星の如き跳び蹴りであった。

「す、げ」

 呆気に取られる一郎の視界の中、ミスカは反動で斜め上へと跳躍。一方二度目の蹴りを叩き込まれたグラウカは、その頭部が根元から千切れ跳んだ。
 程無くグラウカの背部、及び脚部のスラスターから光が消える。まっすぐに落下。轟音と、砕ける氷樹の飛沫をまき散らす。
 かくて停止したグラウカを背後に、ミスカは片手と片膝を突いて着地。すぐに立ち上がるその表情には、しかし勝利の喜びなぞ見当たらない。

「さぁ今の内、と言えれば良かったのだが」

 渋面を浮かべるミスカ。殊更に緊迫した表情。恐る恐る、一郎は尋ねた。

「なんだよ、どうしたんだよ。また次元に穴開けて、改めて俺の部屋に避難すればいいだけじゃないの?」
「簡単に言ってくれるな加藤。確かにそう出来れば良かったんだがな」
「なんだよまたなんかの問題かよ」
「そうだ。それも二つある」
「うっへ。どっちがいい話かなア、なあんて」
「どちらも悪い話だ。残念ながらな」
「ウワーッ聞きたくない! ……けど聞かなかったらもっとマズい事になるんだよなこの感じ」
「察しが良くて助かる。慣れて来たようだな加藤」
「慣れたくなかったけどなチクショウ」
「分かる気がしますね少し」

 遠い目をするジットを他所に、ミスカは指を立てる。

「ではまず一つ目。次元の亀裂を作る事は出来ない」
「いきなりムチャクチャ致命的な話になっておりませんか」
「事実その通りの状況だから仕方あるまい」
「だとしてもちょっと手加減してよぉ」
「状況が好転するなら考慮しよう。今は続けるぞ」
「はい」

 頷いてから、ふと一郎は尋ねた。

「てか、何で出来ないの? 俺の部屋で使ったコンパスあるじゃないか」
「ディバイダだ。あれは開いていた元の穴を広げただけに過ぎない。本部とのリンクがあれば不可能ではないが……現状は無理だ」



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