「巨人は壊せても空間は壊せないワケね」
「そういう事だ。で、二つ目だが」
その時、ごう、と。
ミスカの言葉を遮って、上空を横切る影が一つ。
恐る恐る見上げれば、そこには新たなグラウカが浮かんでいるではないか。
しかも、三体。
「……二つ目だが」
「ひょっとして、敵はひとつだけじゃないって言いたかった?」
「その通りだ。良く分かったな」
「そうだろうそうだろうわっはっは」
「ヤケになってませんか加藤さん」
「だってジットくんこんな状況そうでもしないとやってらんないじゃないか」
「歓談するのも結構だが、そろそろ宜しいかね」
その時、ずん、と。
三人の会話へ割り込みながら、三体のグラウカが音立てて着地した。
「あ、はい。何ですか」
反射的に答えてから、一郎は目を剥いた。
「喋った!? 人が乗ってるの!?」
「そりゃ当然だろう。索敵の基本だ。そして」
がごん、と。
圧縮空気を排出した後、中央のグラウカの胸部がゆっくりと開く。開いたハッチに足をかけ、パイロットが顔を覗かせる。
声の通り、パイロットは男だった。
若く、尊大な。
「キミ達の命運は、今まさに私の、トーリス・ウォルトフの手の中にあるという事だなア!」
狐。
トーリス・ウォルトフと名乗る男に関して、一郎が感じた第一印象がそれだった。それも狩りが好きなタイプの。
服装はミスカともジットともまた違う。身体に密着しながらも、要所をプロテクターで守っている。いわば頑丈なライダースーツと言った具合だ。
やや赤みがかった金髪は長く、頬にかかるそれを一筋、右手で弄んでいる。
緑色をした双眸は切れ長で、見下ろす目線にはありありと喜びが見える。
「あんまり敵対したいタイプじゃあないっぽいな」
「奇遇だな、僕も同意見だ」
「ですねー」
「オイオイオイ! この場でイニシアティブを握っているのは誰だァー!? まだ引き金を引かずにいる慈悲深い私を無視しないで貰いたいものだなあ反逆者ども!」
「いや知らないよ? 何の話反逆って」
「オイオイオイオイ! すぐそこに破壊された私のグラウカ! 更に向こうには消息不明になり必死に探していたギガントアーム・ランバ! そしてそれらの近くにいるお前ら三人! これが反逆者でなくてなんなのだね!」
「参りましたね、結構筋が通ってますよ」
「てかランバって言うのか、あのでっけえ刀」
「呑気な事を言ってる場合ではないだろう二人とも」
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