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猛撃のディープレッド(14)1600字くらい
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猛撃のディープレッド (13)WIP 2
フレイムフェイスは正眼。日本刀の基礎にして、この二百年間数多の敵を斬り捨てて来た構え。波一つない水面じみた静寂。
対するスティア戦闘態は螺旋。ねじるように構えた右腕、細剣の柄頭を|頤《おとがい》へ接触せんばかりに近づける。爆発寸前のエンジンじみた昂ぶり。
静と動。真逆の刃を向き合わせながら、フレイムフェイスは問う。
「ところで、勝敗の判別は?」
「先に一撃。どのようなやり方でも」
そうでしょうとも。
その返しを、フレイムフェイスは思考の中だけで止めた。昂り続けるスティアの闘志を前に、そのような問答はもはや無粋。
ぶつかり合う視線越し、互いは互いの隙を探し、仮想の刃が斬り結ぶ。
五撃。十撃。
二十撃。三十撃。
それは第三者から見れば、あまりに静謐な睨み合い。
されども凄まじき闘志のぶつかり合いは、それだけで肌を刺すようであり。
「……!」
やがてリヴァルが耐えきれず唾を飲んだ瞬間、両者は動いた。
「ひゅ――!」
先手を取ったのはスティア。右腕のみならず、全身の膂力を余す事無く乗せ切った神速の刺突。質量を持った光線の如きその一撃は、ともすればラージクロウの装甲すら貫通せしめただろう。言わば閃撃。必殺の技。
だが。
フレイムフェイスには、それが見えていた。
一歩。左足を引きながら、フレイムフェイスは構えを変える。刃を上に向けたその様は、『海の向こう』で言う所の霞の構えに似ている。
違うのは重心が低い事と、峰に左手を添えている事。防御の姿勢。この時スティア戦闘態の閃撃は最高速度に達しており、切磋の軌道変更は不可能。結果、細剣は日本刀の鎬の上を、導かれるように滑った。
「く、」
歯噛みする間もあればこそ、スティア戦闘態は動きを変更。膂力を生かして押し込み、動きを封じる方向へ切り替える。
その為に、足を止めた一瞬。
その絶妙な間隙を、フレイムフェイスは突いた。