列車で知り合った、美しい青年は話す。 過去に、妖精に出会ったこと。 再会の約束に、花冠の指輪を貰ったこと。 そして時は過ぎていき、大人になったこと。 ※こちらは2017年5月6…

その猫の黒色は、私の髪の色と同じだった。 その猫を私自身だと思い、私自身であるように願った。 私と黒猫エインセルの物語。 ※他サイトでも公開しています

兄が引きこもって以来、母は僕を見てくれなくなった。 兄はクズ人間で、僕は優秀なのに。 ――僕は両親の愛を独り占めしたい。それだけ。 引きこもりの兄と僕の物語。

僕と姉さんは双子の姉弟。ずっと一緒だと思っていた。 しかし大人になるに連れ、僕達は別の人間になっていく。 姉が離れていく。 ――耐えられないことだった。 ――だから殺すことにした…

「文学少女」と中学校内で呼ばれるの篠原生成は、本を読むだけではなく、ここではない美しい別世界を空想することも好きだった。 ある日生成は、不登校だったクラスメイト望月文子と友達にな…

夜空の瓶詰売ります。夜空が恋しい方、ぜひどうぞ――。 その小さな村は夜空の瓶詰の産地。 十歳になれば、やっと瓶詰作りに参加できる。 ジェールは初めての瓶詰作りに『夜空の泉』と向か…

黄金の羊が生まれたのなら、大切に育てなさい。 その羊は、ある羊飼いの少年と、黄金の竜の、友情の証なのだから。 ――星を喰らった竜の前に、少年は剣を片手に立ち塞がった。 ※こ…

死は忌み嫌われ、それ故に墓地も忌み嫌われ。 墓守の仕事をする者も、それにふさわしい、生まれながらに醜い男が選ばれた。 誰も来ない墓地で、男は一人、孤独に生きていた。 白い花を持っ…

竜。人はそれを、想像上の生き物だと言いました。 けれどもその村を訪れた者は皆に言います。竜は本当にいたのだと。 ※こちらは2019年11月24日のCOMITIA130で無料配布…

『朱山祭』で巫女に選ばれ、山の神と対面することになった十歳の少女ネリ。けれども神や失敗を恐れて、祭りの前日の夜、村から逃げ出してしまった。 その先で出会ったのは、狐の耳と尾を持っ…

『欠けた満月の湖』で、妖精は一人踊り続ける。 大切な人の意志を継いで、迷える魂を導き星にするために。 KAC20204「拡散する種」参加作品。 ※ノベプラでも公開しています。

ヨースケがジュンと浜辺を散歩していると、ジュンが奇妙なものを拾った。その日から、ジュンは奇妙な音楽を口ずさむようになった。 クトゥルフ神話の『エーリッヒ・ツァンの音楽』を元に書…

ある日、羊飼いは天使を見つけた。天使を辞めさせられるため、羊の悪魔になる予定だという天使だが、悩み事があった。 「羊の悪魔になったのなら……黒い羊になるっていうんだ！　僕は白くて…

『緑のたぬき』派赤嶺さん。『赤いきつね』派緑川さん。 かつて女子高生だった二人だが、十年経った今、赤嶺さんは社蓄になり、緑川さんは自分探しの旅をしていた。

「この娘を連れて行ってはくれないか」 死に場所を探していた男が押しつけられたのは、一枚の美しい鱗だった。 それはその鱗一枚を残して貴族に食われた、人魚のものだという。 男は鱗を…

学園にあるからくり時計の人形。その一つが、二週間前に失踪した親友によく似ていた。 ※カクヨムユーザーでない方や、匿名希望で感想を送りたい方はこちらをご利用下さい。 https:…

昼は祈り屋。魔法使いエッケが「祈りの右手」で祝福を与えてくれるよ。 夜は呪い屋。魔法使いハーファが「呪いの左手」で呪詛を与えてくれるよ。 双子だけど、身体は一つ。 力は一つしか…

世界を滅ぼそうと思った魔王。いつのまにか勇者に夢中になっていた。 頑張れ勇者。かっこいいところを見せてくれ勇者。 魔王は『推し活』を続ける。 ※KAC2022第二回「推し活」参…

夜中になると胸の奥で疼く「もやもや」。 注射器で吸い上げれば、気持ちはすっきりする。 けれども吸い上げたこれは、どうしたいいのだろう。 ※鬱注意です。 ※KAC2022第十回「…

「白薔薇令嬢」は、ユニコーンの世話をするためだけに育てられ、ユニコーンのいる箱庭に閉じ込められる。恋をできない彼女は「生贄」でもあった。 けれども彼女は言う。 「あなたのせいで、…

もし、争う人々の前に、強大な力を持つ、恐ろしい存在が現れたら？ 平和を祈り、争いのない世界を望む聖女は、考えずにはいられませんでした。 ※他サイトでも公開しています。

恋愛は邪悪。 誰かが愛し合っていることに気付いたのなら「女神さま」に告げること。 そんな義務のある島で暮らす中学生・間宮コバトは、果たしてそれが正しいのか、疑問を抱いていた。 誰…

「この国の外に戻ったのなら、どうか私のことを、悪く言ってほしいのです。私は……地獄に行きたいのです」 不治の病にかかった令嬢は、医師にそう願いました。 ※他のサイトでも公開して…

わがままな貴族の娘は、気に入らない人間がいればすぐに死刑にしていた。 ある日、死刑が行われる中庭で、黄緑色の芽を見つける。 芽は人の血を浴びて成長し、美しい薔薇をつける。 唯一の…

『鶴のレンタルサービス始めました！　鶴があなたの生活を豊かにします！　お部屋のお掃除、お食事作り、全部鶴にお任せ！　優秀な家事代行です！』 ※他のサイトでも公開しています。

やむを得ず骨董屋で働くことになった十五歳の少年ネイト。 様々なものがひしめく店の中、彼は棺で眠る黒髪の少年人形を見つける。そして店主に言われる――吸血鬼人形クオーレが『生き返る』…

迷子になってしまった幼い僕。 コンビニに入ると、アイスケースの中に女の子が入っていた。 髪も瞳も水色の彼女。額にはシールが貼ってある。 『そだあじ　十んえ』 ※他のサイトでも公…

「彼はきっと、聖人なんだよ。だってほら、いつも杯を持っているじゃないか。あれは多分、神聖なものなんだよ」 「あいつかい？　ただの酒飲みだよ。いつも杯持ってるだろ？　あれは酒をねだ…

夏の夜。星空保護区の職員は星を保護するのに忙しい。 熱中症で落下してくる星を救え。 ※他のサイトでも公開しています。

ししゃも。それは人類が発明した奇跡の食べ物。 キュウリウオ目キュウリウオ科の小さな魚を改良したものである。 ※他のサイトでも公開しています。

「扉の落下現象」に襲われた人類は、地下シェルターに逃げ込んだ。 空の下にいては「扉の向こう側」にさらわれてしまうから。 ※他のサイトでも公開しています ※SFかホラーか迷いまし…

前世は勇者だったが、女に転生して百合小説作家として活動をしていた「ロロラン」。 イベントで百合小説本を売っていたら、壁サー百合小説作家「にずふわ」にえっちな本の取り置きを頼まれた…

なんとなく学校にいけない中学生の僕。不登校になってついに一か月を迎えた日、眠れなかったため、深夜にコンビニに向かうことにする。 そこで出会ったのは、奇妙な狐のお面をつけた男だった…

その森には「アッチーケ」という孤独な怪物がいました。 家族を失った子狐は憧れ、アッチーケのようになると心に決めました。 他のサイトでも公開しています。

盗賊に盗まれた竜の卵は、カラスに盗まれ、金持ちに盗まれ、猫に盗まれ、料理人に盗まれ、学者に盗まれ……。 売られるのか？　飾られるのか？　食われるのか？ 孵化できるのか？ ※他…

僕は勇者だから。 悲しい顔なんてしている場合じゃないし、そんなこともしちゃいけないんだ。 気付いた？　僕って存在が、みんなを安心させるんだ。だから、僕は笑っていたいんだ。 ※他…

少女の誕生日に贈られた人形は、着せ替えられ、少女好みに染められ、大切にされていました。 けれども成長した少女に、人形は捨てられてしまいました。 地面の上、劣化による黄ばみに、雨の…

「帰りたかっただけなのに」 　別の世界から召喚された勇者は、最後に血を吐きながら言いました。 「戦いなんてなくて、静かで、平和なところで……」 　勇者のことを、少しかわいそうに思…

不幸な流れ星に、自分の幸福を願おう。 だって誰かの不幸は誰かの幸福になるから……不幸を拾い集めて幸福になろう。 ※他のサイトでも公開しています。

「鉱石の記憶」を聴くことができる『鉱石』ラジオ。 これで流れ星の記憶に耳を澄ませたのなら、宇宙旅行の一幕が見られるだろうか？ ※他のサイトでも公開しています。

面接への準備は万端。荷物を預けようとロッカーを開けると、インコがいた。 「『シボウドウキ』ヲ教エテクダサ！　『シボウドウキ』ヲ教エテクダサ！」 ※他サイトでも公開しています。

今しかないから、過去のこと、未来のこと、考えなくていいよ。 君にひどいことをする人もいないよ。 あるのは君がほしかったものだけ。 ※他のサイトでも公開しています。

夜、人々が虚無感に苛まれ、虚無のもやもやを生んだのなら、それは猫の姿になって人々の目の前に現れる――それが、新しい世界のルールでした。 ※他のサイトでも公開しています

「好きなものを『覗いて見て』あなただけの万華鏡を作ろう！」 たくさんの星を『覗いて見て』、僕は自分だけの星空を作った。 ※こちらは2022年11月20日の文学フリマ東京35及び…

放課後、そのトイレに入ったら、もう外に出られないかも。 花子さんが満足するまで、お喋りしてね。 花子さんはトイレの外に出られないから、色々知りたいんだ。 ※この作品は他のサイト…

メロンクリームソーダだけにしかない、きらきら。 ※他のサイトでも公開しています。

木の下で首を吊ったのなら、その木は満開の桜の木になる。 隣のあの子も、裏庭の木で首を吊った。 窓の外では、青空の下、今日も満開の桜が風に揺れている。 ※他のサイトでも公開してい…

小学校の鶏小屋で飼育している鶏が卵を産み温め始めた。 しかしいつまで経っても卵は孵化する様子を見せず、ある日ウサギ小屋のウサギが一羽姿を消した際、卵は鶏の下で血塗れになっていた。…

人類は不老不死を得たものの、それは同時に永遠の労働を意味していた。 労働から解放される、すなわち死を手に入れるために、Ｋ氏は『幸福な死』への挑戦を行う。仮想空間で死に至り、それが…

竜騎士はみんなの憧れ、英雄です。 とある小さな村にも、竜騎士に憧れた竜が一匹、少年が一人いました。 しかし飛べなくなった竜は、竜騎士の竜として務まらず、耕運竜になるしかなかったの…

真っ暗な夜。 目も見えないしうまく飛べないはずなのに、一羽のカラスが夜空に羽ばたこうとしていた。 ※他のサイトでも公開しています

その山で遭難したのなら、竜の助けを借りましょう。 そのために、まずはかまくらを作るのです。 ※他のサイトでも公開しています

ホームセンターで安売りされていた『星の花育成キット』。 一週間であっという間に大きくなるのに、どうにもうまく、咲かせることができずに八日目の朝には枯れている。 きらきら輝く星は見…

「運よく火事から生き残ったんだ。せっかくだし、お前が一匹で生きていけるくらいになるまでは、面倒をみてやろう」 「それじゃあ、お母さんだ！」 大火事から生き残った竜を、鳥は育てる…

私の夜のお供はブラックコーヒー。 私のお守り。 明日を連れてきてしまう眠気を追い払ってくれる。 ※他のサイトでも公開しています

仕事がうまくいかない。いつもなら問題なかったのに。 だから病気を疑って病院に行ったのなら「妖精」が処方された。 ※他のサイトでも公開しています

人間達に森を奪われては困る。そこで狐達は嘘を吐き始めました――この森には竜がいる、と。 ※他のサイトでも公開しています。

大規模な魔法大戦が行われた大地で、死んだはずの魔法使い達は死にきれずにいました。 漂う濃い魔力のせいで、死んだはずなのに、生ける屍となってしまったのです。 つまり、彼らはゾンビに…

アヤカとシオリは、web小説を読むのが好きだった。 ある日、シオリはアヤカに教える。 「そういえばこの前、SNSで変な投稿見ちゃってさあ、なんか萎えたっていうか……」 「なんだ…

ダックスフンド。あるいは、ダックスフント。 彼らは気付いてしまった。この長い胴は人間に気に入られていることに。 たくさん撫でてもらえる。胴が長い分、撫でてもらえる面積も増える。 …

いまの世界とは別の世界での「前世の記憶」を持つ一人の冒険者。 魔物との命がけの戦いに疲れた彼は、簡単な仕事を一つ請けました。 『元気が出るものだ、と言って真っ黒い薬を出す店があ…