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君に届け

少年よ。
ぼくはあの夜、君にひどいことをたくさん言ってしまった。
君をすごくすごく傷つけて、苦しめてしまった。
いま君が悩んでいるのかどうかはわからないけれど、
もしかしたらこうやってノートに書くことで、なにかが変わるかもしれない、と思って、
書いてみます。

君にひどい言葉をたくさん投げかけた。
でも、君には君のペースがある、
君には君の変化のタイミング、成長のタイミングがある、ということが、どうしてぼくにはわからなかったんだろう。
君に、いますぐ変わるんだと変化を強制して、本当にごめんなさい。

人には他人に絶対に言ってはならない言葉がある、という、そんな当たり前のこともわからないでいた自分を、ボコボコにぶん殴ってやりたい。
君を傷つけて、ごめんなさい。

同じゲイとして君も辛い思いをしているんだ、辛い日々を送っているんだと思って、君がぼくと同じように苦しんでいると思って、だからどうしても君を助けなきゃと思ったのだけれど、
君が助けてくれと言ったわけでもないのに助けようとするなんて傲慢だった。
ごめんなさい。

そもそも、同じゲイ同士だからって、
ぼくが抱えている辛さや孤独感と全く同じものを君が抱えているわけじゃないこともわかっていなかった。
重なる部分があっても、君には君のゲイとしての辛さがある、ということもわからなくて、
本当にごめんなさい。

だから君は、あのときのぼくの言葉を気に病む必要なんて全然ないし、ぼくの言葉に支配される必要なんて全然ないんだ。君はなにも悪くない。全部ぼくが悪いの。
だから、君は君のペースで進んでいって、
いいんだよ。

たまたま好きになった人がたまたまゲイだった、という偶然を、どうしても運命にしたかった。でもだからといってぼくはあまりにも性急だった。それで君を傷つけた。ごめんなさい。本当にごめんなさい。

ぼそぼそ喋る君が好きだよ。静かな君が好きだよ。
内気で引っ込み思案でおとなしい君が好きだよ。
ネガティブな君が大好きさ。
大好きさ!

もし、いつかどこかでこのノートを目にして、君がぼくの言葉に支配される必要なんてないんだと思ってもらえたら、いいと思う。
君がそのままの自分のペースで進んでいっていいんだと、そう思うことができたら、ぼくは嬉しい。

それじゃ、君の毎日が君にとって素敵な日々でありますように。
読んでくれて、どうもありがとう。

それでも、もしよかったら、
また、美味しいものを食べに行こう。

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