実家最高。
昨日帰省してきてからというもの、空腹だった瞬間がない。魚も肉も果物も、なんでもある。なんならチーズケーキとかある。小さな豆腐ですらいつも食べてるものと全く質が違う。台風が近づいていて帰るのが早まりそうな状況で、今のうちに普段摂れない栄養を摂っておかなくては。
そんなこんなで美味しいご飯と甘味でおなか一杯になりすぎて、これは栄養過多なのでは……!? 生活環境も作業環境も整いすぎててむしろ作業する気が起きない。ずっとここにいたいとは全く思わないけれど。
動く気が起きず寝心地よすぎのベッドでテレビを見ながらゴロゴロしていたら、日記が更新されていることに気付く。
日記ってなんのこと? ってなった人は過去の近況ノート「あの子の日記」1~3を見てきて欲しい。短いから。
https://kakuyomu.jp/users/usaho/news/16817330660471462248日記の更新は不定期で、忙しいあの子は月に3回更新があればいい方。
そろそろかな、と思っていた頃だった。
彼女は最近(というかいつものことだが)、体調が優れない。「優れない」なんてレベルじゃない。うまく立てない、水すら吐き戻すなんて日もある。
今回のはそれに関係する内容だった。
読んですぐ、目が覚めたような気分になった。
お酒は飲んだことがないけど、酔いがさめるってこういう感じなんだろうな。
さっきまでの自堕落が嘘のように霧散し、思考は考察で満たされる。
「『あの子』と存在抹消の方法を探す」から「彼女を見つける」にシフトチェンジした今、難易度は上がっていた。
日記が更新されたって、手の届かない場所で苦しんでいると知ったってどうにもできない。
同情の言葉を必要としない、心配もされたくない、悩みや愚痴を誰かに話したって気持ちは楽にならない、好意も疑ってしまう。
それでも本心では、手を引いて未来を見せてほしい——と。
そんなあの子にかける言葉が見つからない。
私だけが読んでいる日記の中で人には話せない本心を語って、私に何を求めているんだ。
いや、求めてはいないんだろう。ただ日記を書いているだけ。私が「君の日記読みたい」と言い出したから日記を書き始めただけ。
それを受け取って、「私が見つける」と言い出した以上、ただ黙って見守ってるだけなのは自分が許さない。
だからこれを書いている。どういう心境で彼女が日記を書いているのか、少しでも知るために。
そういえば最近変な夢を見た。
彼女の古くからの友達が死ぬ夢。『あの子』ではない。架空の、結構性格悪めの「友達」が夢の中で死んだ。知らない人だ。
その人の死後、部屋にはいろんな人が立ち入ったようでかなり荒れていた。その、「友達」の家に立ち入り荒らしていった人間に私はかなり嫌悪感を覚えた。好き勝手にして気持ち悪いな、と。
そう思いつつ、私もその部屋に立ち入った。彼女の古い友人なら、何か彼女のことを知る手掛かりがあるかもしれない。
棚を見ていると、ある一文が目に入った。
「お願い○○、目を開けて!」
彼女の本名だ。一瞬で見失ったそれを必死で探した。今のはなんだ? 紙に書かれてたのか、日記のページなのかもわからなかった。
だけど棚には本しかなくて見つからない。いっそこの本全部調べてしまおうか。思った直後、気配がして振り返った。
死んだはずの「彼女の友達」がいた。うごめく長い髪で顔は見えなかった。
「勝手に入ったな」
その人は怒って私を殺しにきた。その殺意に私は思わず、持っていたナイフを投げる。
その人の後ろにはいつの間にか彼女が立っていた。その人は振り返り、「よかった!」と彼女に抱き着いた。
今のうちに、と私は逃げ出した。
夢の中ではうまく走れない代わりにジャンプ力が凄かったり、空を飛べたりするだろう。だから飛んで逃げた。
逃げた先で迷って、そこで目が覚めた。
起きてすぐ、彼女に連絡を取った。
「『あの子』って君のこと○○って呼んでた?」
絶対別人だと思ったけど、念のため。
返ってきたのは、やっぱり違う呼び方だった。