今回のカクヨムコン参加作品の中で特に気に入っているものを長編三本、短編三本紹介したいと思います。
実は最初Twitterにて感想の形で紹介したのですが、私「作品リンクのみで紹介すると検索に引っかからない」というのを知りませんでした(さっき知った)。
せっかくなので作者さんに届いた方がいいなとは思うのですが、作品名とお名前を入れてツイートし直すと感想が少なくなってしまう…。
そんなわけでこちらにて、呟いたものにプラスアルファの感想を加えておすすめすることにしました。
【長編】
ツイートリンクはこちら。
https://twitter.com/uoichi5/status/1608078653006675970◆悠井すみれさんの『花旦綺羅演戯 ~娘役者は後宮に舞う~』連載中
https://twitter.com/uoichi5/status/1608078653006675970国一番の花旦を目指して舞う燦珠の活躍を描く、中華ファンタジー。
しなやかに伸びやかに踊る燦珠を始めとした踊り手の、躍動感溢れる描写が読んでいて心地よいです。
果たして燦珠は華劇嫌いの皇帝の心を動かすことができるのか、陰謀に立ち向かう姿も楽しみにしています。
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すみれさんの作品は、どの作品もディティールを表現する語彙が豊富で素晴らしいのです。
衣装はもちろん今回は指先の動きまできっちり伝えられていて、並々ならぬ熱量を感じます(確か宝塚がお好きだと書かれていて、納得しました)。
現在、ただただ踊るのが楽しくて仕方ない燦珠の姿をたっぷり堪能した前半から、後宮に渦巻く陰謀が絡み始めた後半に入ったところです。
年末年始で一気読みして、後半を毎日少しずつ追っていただきたいです。
◆肉級さんの『梔子の実が開くとき』連載中
https://kakuyomu.jp/works/16817330650332593028一枚の心霊写真から始まるホラーミステリー。
女子校育ちの二人が写真の謎を解くため旅に出るが……。
ネタバレになるので多くは書けませんが、不意に背中を押されては少しずつ落とされていくような怖さが沁みます。
今後どこへ向かっていくのか、楽しみにしています。
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最初はちょっとした(といっても心霊写真ですが)、謎なんです。
ホラーミステリーなので実際に読んで味わっていただくしかないのですが、
小さな謎がずずずずずずっと拡がっていく感じがとても心地よい。
私は大抵死体を転がすところから始めるので、こういう組み立て方もできるようにならないとな…と書き手として勉強になります。
◆珠邑ミトさんの『白玉の昊 序章』完結
https://kakuyomu.jp/works/16817330649431115461閉鎖的な村に祀られている「白い玉」様を巡る人間模様を描いた、和風ファンタジー。
少年達の成長譚とも、成熟した大人達の悔悟の記録とも。人間性の描写がとてもお上手で、毎回拝読する度に唸ります。硬質な文章に心惹かれる方はぜひ。
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好みの作品だけでなく好みの文章を見つけるのがコンテストでの愉しみの一つだと思うのですが、作品のおもしろさはもちろん文章が本当に好みです。
言葉の選び方や描写が合わないとどうしても流れが途切れがちになってしまうのですが、それがない。読むというより「読まされてしまう」。
現在序章は完結されて『破章』の連載を開始されています。
【短編】短編は全部完結済みです。
ツイートリンクはこちら。
https://twitter.com/uoichi5/status/1608400442937208833◆神崎あきらさんの『水の棺』
https://kakuyomu.jp/works/16817330650201330728母の四十九日を目前にして、娘が母の思い出の地である高千穂へ旅に出るお話。
これは自身に経験があるかないかで突き刺さる具合が違うかもしれません。
私はいろいろと思い出して、切なくなりました。
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小説の愉しみ方には、自分とまるで違うシチュエーションを体験するほかに、自分の記憶に引き込んで味わう方法があると思うのですが、この作品は後者です。
私は自分が忘れられていく経験も遺された経験もあるので、懐かしさを噛み締めるように味わいました。
◆悠井すみれさんの『猫の臍は見えない』
https://kakuyomu.jp/works/16817330650680153810SFですが、そう遠くない未来の話にも思えます。
「昔は良かった」か「私達の頃は大変だったんだから」か、それを見守る私達(生きていたら)もどんな選択をするのでしょう。
夫婦のあり方を考えさせてくれるお話。
そして猫かわいい。良い。
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生殖のしくみが変わらない限り、子宮と精子が必要なのは変わらない。
変わらない以上は、何年経とうが何かしら夫婦はこんな風にぶつかったり分かち合ったりしながら生きていくんだろうなと思います。
あと、優しい夫だとやっぱりこんな向きに行くんだな、と妙に納得。
◆尾八原ジュージさんの『呪われた橋』
https://kakuyomu.jp/works/16817330651168296253ある橋をめぐるホラー。
ネタバレしたくないので内容には触れませんが、独白調の勢いを活かすのにちょうどいい長さ。
関西弁でのらりくらりと、どこか胡散臭いような語りを使われたのも本当にお上手。
標準語だったらこうはいかなかったのでは。
好みです。
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ネタバレしないようにホラーの感想を書くのは難しいので(短い作品だと特に)、ここでも上と似たような内容になってしまうのですが、勢いが削げないうちに読み切れる絶妙な長さなのが素晴らしいのです。
果たしてその橋は本当に「呪われた橋」なのか。
読めば、分かります。1000字程度の短い作品なので、ぜひ。
以上、年末年始に読んでいただきたい長編&短編でした。
次はちゃんと、タイトルが載る形で呟けるようになっておこうと思います。