魔法や異世界をシステムエンジニアやプログラマー目線で解釈し、主人公がスマートに使いこなしてみせている、そんな要素の作品を紹介します。
なお、私はその職ではないので各作品でどのような言語がベースになっているかは分かりません。
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【凡例】
■作品名
作者名(敬称略)
作品URL
コメント
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■カウンターワールド・クロスオーバー
土井タイラ
https://kakuyomu.jp/works/16817330667145505714呪文の詠唱がわりとプログラミングコードそのままに見えます。ファンタジーなら通例ありがちな、神や精霊への祈りの要素が削ぎ落とされて命令文だけに整理されると、なかなかスタイリッシュに感じます。
さらにこの世界の魔道士は傘を媒体として魔法を発動します。蛇の目傘、こうもり傘、番傘などを広げてその上に術式が展開するという、ケレン味のあるビジュアルが見どころ。
また、魔道士は真実しか口にできない(嘘を言えない)という縛りも、ストーリーを面白くさせる設定。お話は第一部完といった印象ですが、魔法の攻防が楽しめるので良しです。
■プログラミング・ザ・ワールド ~魔法の呪文詠唱なんて面倒だし恥ずいので関数化して運用します~
みたよーき
https://kakuyomu.jp/works/16817330667802597051こちらの異世界ではそもそも呪文の唱え方にも流派があり、同じ魔法をイメージしても発動させるには神に祈るか精霊に命じるか、単に具体的に形容するかというアプローチが違うだけ、という解釈。
そこで主人公(元ゲームプログラマー)は、どこに何をどれくらい、といった条件を関数化してほぼ一言で発動する呪文にしてしまいます。
第一話で呪文の構成を解説していて、おおかっこいい…と思わせてくれるのですが、そこに到達するまでの経緯がちょっと長くて、第一話並みの呪文にお目にかかれるのは20話あたりから。
作品の雰囲気はスローペースなロードムービーで、飯食うときだけハードボイルド。
■事例で学ぶ! 異世界IT改革術 ~「ガラクタ」魔導兵を復活させた、SE女子の知識と技術~
五色ひいらぎ
https://kakuyomu.jp/works/16817330655362555421魔法を勘で使いこなすのではなくちゃんと理論を理解したいのが理系脳。前出の『プログラミング・ザ・ワールド』もそうですが、魔法の体系化や研究があまりなされていない異世界に飛ばされた場合、呪文の解析は困難を極めます。
現地の術士たちは、よく分からないなりに呪文を継ぎ足し書き足して魔法を運用してきており、飲食店なら秘伝のタレとして価値も出るしょうが、IT屋から見れば悶絶もののスパゲティ・コード。
この作品では、主人公(元SE)がそんな呪文の解析に現地協力者とともに実直に取り組み、小石を積み上げるようにして何とかカスタマイズを果たし、街の役に立つ魔道具を開発するというストーリー。
闇落ち展開があるところは多分作家さんの個性じゃないかと思います。
■天才プログラマー魔術をマスターして美少女AIと共に世界を救う~フィルディアーナ・プログラミング
譜田 明人
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887811528世界の設定、いや設計そのものからゴリゴリにシステム開発技術を使いまくっていく作品。本職らしく、専門用語が散りばめられていて、一見敷居が高そうに見えます。でも背伸びして手を出して、そのうち3Dゲームや3D映像を作るようになったら初めて何が書いてあったのかわかるようになる、そんな作品ではないかと思います。
主人公(大学生兼ITベンチャー起業家)は個人で仮想世界の開発に取り組んでいてその先進性に神様がまんまパクった異世界を創ってしまうほどの天才ぶり。しかしその異世界はどうしても致命的なバグが起きてしまうので、デバッグを頼まれてその世界に送り込まれる…というお話。
神の使徒という位置づけなので、チートが与えられて本人の天才ぶりとの掛け合わせでサクサク何でもできる感じで序盤からしばらくは話が進んでいきます。
■魔女曰く、ステラ・ディーヴァの要件定義は。
深水紅茶(リプトン)
https://kakuyomu.jp/works/16817330666893093313コードを書くような現場作業や設計も楽しいけれど、いやいやもっと上流工程から考えてみようよ、という向きにはこの作品。
この世界では、魔法石の製法が確立したことで誰もが魔法の恩恵を受けられるようになった、いわば魔法の産業革命的なことが起きていて、新米魔石技師の主人公が天才だけど偏屈な先輩に厳しく指導されながら「顧客が本当に欲しかったもの」を見極めるという「要件定義」がいかに大切かを学んでいくというお話。
この作品にはプログラミング言語自体は登場しませんが、開発工程には欠かせない「要件定義」がテーマになっています。しかし堅苦しくなりすぎず、異世界お仕事ものとして「要件定義」を切り口にお客様が満足する品を届ける人情ドラマにうまく落とし込まれています。
ヴィランの顔見世があるものの、10万文字でひとまず完結しているので、書籍化とシリーズ化をぜひ期待したいところ。
以上、ご紹介でした。
こんなに書くならレビューを差し上げればいいのですが、どうも個人の感想の域を出られず、「他の人が読みたくなるような」感じにまでは書けてなくて。
レビューには練習が必要ですね。