『バロック 〜腹黒小悪魔の純愛〜』第三章「決断(後)」を更新しました。
当初の公開時に初稿からカットしていた箇所を戻しています。これにより、プレスコット家の特殊な事情――なぜ先代伯爵やキースはビビアンに執着したのかが明らかになっています。
レーティングに配慮して、当初はカットした方がよいと判断していたためです。
『バロック』は、初稿では婉曲的ではありますが性描写がところどころありました。
大人の恋愛を扱うので、オトナの関係を前提としたボディコミュニケーションが自然に行われるだろうし、そういう目線で相手を観察したりもしている…といった表現が入っていました。
また、同性愛者のリアリティを伝えることも作品の目的の一つでしたので、それには性描写もある程度必要と考えてもいました。
とは言えポルノみたいな表現をして作品の品位を落としたくないし、一般書籍ならまあありかな、という程度の婉曲表現をするよう努めました。
しかし、そのままウェブに公開するのは慎重にならなければいけません。
この作品は「小説家になろう」と「カクヨム」に同時掲載しましたが、いずれも性描写に関してはガイドラインがあるので、それに従う必要があります。
ただ問題は、それぞれのガイドラインが微妙に異なっていること。
なろうでは「R15」「R18」の二段階になっており、R18は別サイトとしてゾーニングされています。
R15は、(私がガイドラインを読んで解釈した限りでは)15歳未満にはちょっと読ませたくないものや、エッチなことをしてるっぽい描写が該当するようです。
R18は、エッチな行為の描写が該当します。一般書籍ならありだろうという程度でも、なろうではR18相当と判断する場合もあるとのことです。該当するか迷うようならR18にすることを推奨してもいるようです。
この姿勢については賛同できます。
ガイドラインに従わずに、見せてはいけないユーザーや見るのを望まないユーザーにそういうコンテンツを開陳したせいでサイト自体がなくなったら大問題ですから。
一方、カクヨムではゾーニングはありません。ガイドラインでは、エッチな描写は必要最低限にすること、その描写がR15相当であれば「性描写あり」のタグを作品に付けることを求めています。
ただ…必要最低限の描写の例として「表現・描写などにより著しく性欲を刺激するもの」とあるのは少しひっかかります。なろうでは、「著しく」刺激するものはR18、著しくないけど刺激するものはR15です(私の解釈です)。カクヨムでは、R15相当のタグ作品として「著しく」(=なろうならR18相当)も許容されてしまうのではないか…と。
なろうとカクヨム同時掲載なので、内容も同一にしたいです。
となると、基準厳し目のなろうに合わせたほうが無難です。
性的感情を刺激しそうなおそれのある表現を残すとR18と判断されかねないので、それらを可能な限りカットしていくことにしました。
また、そういう表現なしでも私が語りたいことが伝わるならばそれに越したことはありません。本当に伝わるのか、自分の筆力を試す意味でも、性描写なしを維持しようと思いました。
それが匂わせ程度であってもです。
例えば第三章「露呈」の一文。
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<初稿版>
僕は上掛けを引き上げて彼女のむき出しの肩を覆ってやり、改めて寝顔をしみじみと見た。
<公開版>
僕は上掛けを引き上げて彼女の肩を覆ってやり、改めて寝顔をしみじみと見た。
ーーーーー
「むき出しの」という一語をカットしただけです。ただの「肩」なら着衣か裸かわかりません。まあ愛人関係の二人が同衾してるんだから大人の読者なら着衣とは思わないでしょう。でも「むき出しの」と書けばシチュエーションは確定します。そこから読者は、肩がむき出しのままで眠るに至る経緯を想像し始めることになります。つまり、この一言によって読者によっては性的感情を刺激させられてしまうわけです。
考えすぎかもしれません。
こういったものすごくさり気ないけど読みようによっては、性描写を示唆しているのでは?と思われるような表現は、現在の公開版にもわずかに残っています。そこはどうしても必要な箇所で削るわけにいかなかったので可能な限り婉曲にしています。むしろ、その箇所を読んでエッチに感じるかどうかは読者の想像力次第というところです。
それと、カット対象は性描写だけではありません。R15=15歳以上なら読んでOK、とした場合、15歳になった中学三年生も含まれます。「この話…中三に読ませてもいいものか?」と迷ったのが、冒頭で述べた第三章「決断(後)」の部分です。
ここはちょっとエグめの内容なのです。でも公開版も後半に行くとだいぶエグい事態になっているので、今更ここを隠したところでエグい・重いという印象は変わらないでしょうね。逆に話の中盤でエグさその1が示されることで、これって情念濃い作品なんだな、と個性が伝わるかもしれません…。
冒頭にも書いた通り経緯がわかりやすくなるということもあり、しばらく迷っていましたが戻すことにしました。
ちなみに、R18相当としなかった内容もあります。
避妊についての考え方やアフターピルについては、18歳になってから知るのでは遅いのではないかと私は考えています。読者自身がそういった状況に直面する前に、適切な知識を得るなり培えるなり示しておきたい。だからカットはせず注釈を添えるといった対応になっています。
似たような判断は、『千の箱庭〜婚活連敗王子はどうしてもフラグを立てられない〜』第8話「フィオナとジル」でも行っています。
長くなりましたが、このような考え方にて執筆しております。
どうぞよろしくお願いいたします。
P.S.
最後に大人の方へ耳打ち。初稿版は月明かりの下でこっそり読み比べができますよ…