• 詩・童話・その他
  • 恋愛

深緑の奥


深緑の奥には
声のない時間が棲んでいる

風は
葉のあいだでだけ話し
光は
地面に届く前に
すべてをやわらかく忘れていく

足を一歩 踏み入れるたび
世界が少しずつ
こちらの言葉を脱いでいく

ここでは
記憶も 名前も
意味を持たなくなる

ただ 苔の匂いと
静かな蒸気と
遠くで鳴く鳥の声だけが

わたしがここにいることを
まだ認めてくれている

深緑の奥で
わたしは
わたしのままで
かすかに 息をしている

4件のコメント

  • いくつか作品を拝読致しました。

    いずれも「人間の温もり」を感じさせる素敵なお話でした。(現代のアンデルセンかと思いました!!)
  • もったいない言葉です…でもとても嬉しいです、ありがとうございます。
  • はじめまして。
    作品もすばらしいですが、近況にあげられていることばの数々も詩として成立していてとてもひきつけられます。

    ご興味があればココア共和国などへ投稿されてみては? 載ると思います。おせっかいでしたらごめんなさい。


    すこし嫉妬するほど、すてきな感性をおもちです。
  • 虹乃ノランさん、はじめまして。
    読んでいただきありがとうございます。

    おせっかいなんてとんでもない。
    そう言っていただいて、勇気が出ました。
    臆病すぎて踏み出せなかったので。

    素直に嬉しいです。
    本当にありがとうございます。
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する