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卯月の初心者さんのための短編作成講義の実況中継?④

本講座指定テキスト『夕方五字のリスム』がしぶとくもSF週間55位へと10上昇です。まあ、この辺りから失速、墜落し海の藻屑と……。短編というのはほんに儚いものでございます。「蛍二十日に蝉三日」。蛍と蝉の盛りが短いこと、物事の盛りの短いことのたとえとして使われるようで。蝉くらい生きられたらいいかな。さすがに20日は無理。

えっと、蛍がらみで。近況ノートにも書きましたが、昨日、人生初短歌を投稿してみました。いやあ、久しぶりのドキドキと身悶えするような恥ずかしさ。別のサイトですがはじめて小説を投稿したときのことを思い出しました。

この実況中継講義のためであることもちょっとアリ。昨日の第3回では「読者にゆだねる」ということを書きました。二、三千字の短編小説における卯月の中心コンセプトでしたね。

今回挑戦してみた「短歌」は字数(音数)にして三十一文字(みそひともじ、とかいいましたっけ)。字数が足りないどころの騒ぎじゃないですよね。

A word is dead,
When it is said,
Some say.
I say it just
Begins to live
That day.

前にも近況ノートで引用したエミリー・ディキンソンの詩。ことばは音として発せられると意味内容だけを相手に残して消えてしまいます。卯月の短歌も友だちなんかに言ってみて、その反応をみて。いや、ちょっと今のは無しで。とかできますけど、ウェブ上に文字として残すと卯月から切り離されて読んだ方に何らかの解釈をされることになる。

これは恐ろしいことですよね。まったく意図と違った印象を持たれたらとか……。今回の短歌・俳句コンテストの要項には「本文には、自由に作品のイメージ等について記載することが可能ですが、その内容については、選考対象外」と書いてあります。書かれた57577だけで判断するから余計なことは書くな、と厳しめに読んでもよいのではないでしょうか(実はゆるい雰囲気かもしれませんけど)。

卯月は短歌界隈のことには無知なド素人ですから、こういう言葉がこのように使用されたら一般的にこう解釈する的なものを知りません。短歌にはそんなものは無いのかもしれませんが……。某バラエティ番組の俳句ものを見た限りにおいてそんな印象を持ったものでね。

短編小説のファンタジーもの(異世界含む)、エンタメ小説の共通認識的なものは昨日書いたようにわかるのですけど。短歌、俳句の常識とは? まあ、短歌を例にしてみましたけど、みなさんが書かれるジャンルにおける作法や常識なんかがあるのかもしれません。

ファンタジーものでもたまに新着レビュー欄に「これは本来の〇〇が分かっていない作品だ」などと批判的なものを見かけることがあります。えっと、あれってなんでしょうかね。そういうプレイを楽しむ企画か何かなのでしょうか(そんなモノないだろ!)。

ですけど、そんな謎のテロ攻撃に怯えていてはモノは書けませんから。正しい国家のあり方を真似て強い態度で臨むべきだと思います。ちゃっちゃとブロックしちゃえばいいのですよ。

たかだか人間が言葉を修得して記述できるようになってからの歴史なんて知れています。文章やその評価基準だって変化し続けるはず。古いものを大切に守り続ける精神は尊いですけど、音楽も絵画も演劇、ああ歌舞伎なんかだって変化してますよね。

特にこれまで「読み」に徹してこられた方がもしこの近況ノートをご覧になられたなら、声を大にして言いたいのです。「Youやっちゃいなよ!」。あっ、ヤバい方の口調が出てしまった。これってモザイクとか伏せ字必要ですか!?

すいません。つい調子に乗ってしまいました。「この度は当番組において……」。いやいや、反省してないし。

えっと、初めての投稿が「短歌」とか「俳句」って卯月的にはかっこいいと思いますのでオススメです。運営様も「はじめて創作にチャレンジする人限定のプレゼントキャンペーンを実施中!」とかやる気を感じますからね。

脱線話が長くなってしまった……。これ生徒前で授業やってたときとまったく同じなんですけどね。



本題です。今日は短編の書き出し(冒頭部分)について。

文字数の限られた短編において最も重要なのはこの『一文目』です。これはお分かりになると思います。有名どころを上げればキリがないのですけど。

吾輩は猫である。名前はまだ無い。『吾輩は猫である』夏目漱石

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。『雪国』川端康成

メロスは激怒した。『走れメロス』太宰治

桜の樹の下には屍体が埋まっている!『桜の樹の下には』梶井基次郎

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」『風の歌を聴け』村上春樹

ネットを探せばいくらでも、お手持ちのお気に入りの作家様の作品の1ページ目を開いていただければ分かりますね。まあ、なんでもアリです。共通するのは、その一文で小説の世界に入り込んでしまうこと。

そんな書き出しに卯月も憧れはしますけど、これは長編なんかを書く時に考えれば良いと思います。まあ、梶井のは短編ですが(卯月はこれが好き自分の作品でも引用しちゃってます)。

かっこいい書き出しを運良く思いついたところで、そのあとの文章というのは大概続かないものです。

「書き出しの一行によって、地獄の道行きにベクトルができます。一行目がなければ二行目はないし、三行目もない。逆にいえば、一行目を書く前ならどこにでも飛んでいけますが、一行を書き、次の行を書き、次の段落を書くと、つまり、先に進めば進むほど、行き先の選択肢は狭まってきます」(小説作法ABC/島田雅彦)

そこらへんにあるホラー小説よりもモノ書きにとってはコワイ文章ですね。

ということで、短編小説を書くなら初めのうちは「必要なこと」を書くことに専念しましょう。たった二、三千字しか使用できないのです「実用」を意識です。

卯月の『夕方五時のリズム』の書き出しはこうです。

「年が明けた一月のある日。高校の地獄のテスト週間を生き抜いた私は重い足取りで帰宅の途につく。」

なんとも普通の文です。味も素っ気も……。いやいや、これは「必要な」一文なのです。このあと主人公の『はあ、帰りたくない……』というセリフが続きますけど。彼女が(「私は」の主語で彼の可能性も僅かに残りますが、彼女だろうと一応推測可能)、高校生で冬休み明けの憂鬱な気分なのだろうと読み手に思わせています。「一月」という設定はのちに出てくる「逢魔時」を活かすために必要。

卯月はちゃんと国立天文台のホームページで午後五時あたりが日の入りの日時を確認しました。小説を書くにおいて「裏取り」は大切です。そんなに神経質になる必要はないのですけど、たまに細かい内容のツッコミの好きな読者様にはおられるようで。卯月はそういう経験はありませんが、そういう指摘ならWELCOME。わざわざ貴重なお時間を使って教えていただけるのですから。あと、誤字脱字のご指摘をしてくださる方は神! です。

「裏取りは大切」と書きましたけど、科学的なことまで確認したうえでそれを無視することもあります。えっと、ジブリの短編映画に「巨神兵東京に現わる」という作品があります。その中のシーンについて岡田斗司夫が解説している動画があったのですけど、特撮の枠を外れて漫画的な手法をとり入れています。巨神兵のサイズは公式には100mだけどもシーンよっては50mだったり首都を覆うような数kmサイズで出てきます。巨神兵の放つビームもその建物に爆発するような燃料となるものがなくても大爆発(ラピュタでも同様のシーンあり)。宮崎駿も含めてかっこいいシーンを作るためには平気で嘘をつくこともあるって。たしかに東京タワーが大爆発してるところは岡田発言を確認する前に卯月も心のなかでツッコミをいれていました。そういうことなので、小説でもこの事実を盾にしてツッコミへの回答とすればそれはそれで作者の作品愛をコメント欄で表現できるのではないかと密かに思っております。そういう意味でこの短編映画(10分ほど)は観ておくとお守り代わりになるのではないでしょうか。

まあ、基本的にウィキにソースがあれば誰も何も言ってこないと思います。不安があったらwikiりましょう。ということで後半に登場させる『逢魔時』という言葉もフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』で確認済み(もちろん正確でない情報もいまだあるようですので、複数の情報による確認は基本です)。

そんなウィキですが、逢魔時は現在の18時頃のこと。とか書いちゃってました。本当にもう! 夕方の薄暗くなる、昼と夜の移り変わる時刻というのは当然季節によって変化します。というわけで書き出しに「一月」と、こんな6月ごろのイベントに参加する小説の設定を冬にして、文章の先頭に持ってきているのはそういう理由です。

こういったことを毎回短編を書く時に流れ作業的に情報を拾いながら卯月は書いています。慣れたらさほど時間はかかりません。情報はネット上がメインでも手作業で自分の頭で考えながらやっていく方があとあと得をするように思います(生成AIは使わない派のひとりごと)。日本語の情報って少ないので行き詰まることも当然あります。英語の堪能な方は海外サイトを縦横無尽に駆け巡ったらよいですね。こういうときに英文読解力が役にたちます。もちろん翻訳ツールを使えばいいのですが、目的の情報にたどり着くまでが大変。結局、不明な場合は書籍を探す。それで明らかにしたうえで小説にそのネタをどう使うのか、はたまた使わないかは判断することになりますかね。

えっと、わかったうえで、作品のためになるのであれば、小説内の物理法則なり科学常識を無視するのもいいのではという話です。

ちなみに『夕方五時のリズム』の最後のシーンで窓ガラスが割れる場面があります。

『そして巨大な爆発音。つづく爆風で窓ガラスが割れる。』

これ、爆風じゃなくて「空振」で割れるんじゃね? と思ったアナタ。卯月もそう考えました。気象庁の「火山活動解説資料」を確認しております。全国の火山に空振計なるものが設置されていて気象庁さんは観測しているのですよ。

「空振は、火山噴火などにより発生した空気の急激な圧力変化が、大気中を周囲に伝わる現象です。 空振が通過した際は窓ガラスが振動するなどの現象がみられ、さらに強い空振では、窓ガラスが破損するなどの被害が発生することがあります。」気象庁火山活動解説資料より引用。

まあ、核ミサイルだと空震で窓ガラスも割れそうです、昔、ロシアに落ちた隕石では窓ガラスが割れるのはもちろんのことドアが吹き飛んだのだとか。

これ、空振という言葉で書くとなんか迫力が激減するのですよ。爆風なら爆心地から一帯が被害に遭ってしまい、冒頭に書かれた「地方都市のすみっこに私の家はある。」の一文が被害の凄まじさをイメージされることになるだろうと、「かっこいいシーンを作るためには平気で嘘を」ついているのです。

ここまでたどり着くのにかなり文字数を要しましたが、卯月の今日書きたかったのはこの部分でした。

あー、すっきりした。

ということで、ではまた。


3件のコメント

  • ファンタジーに、リアルなツッコミ来ますよね。
    最初の頃はオロオロしました。
    常識的な、ファンタジーって、面白いですかね?
  • ユー、やっちゅいなよ。
    私見ですが、死体げりするのは、下品です‼️地獄行きです‼️笑笑
  • 久遠 れんり さま

    ファンタジーなのにとことん常識的というのは、貫き通せばそれはそれで逆説的な「皮肉」を含んだ作品となって面白いのかも……、なんて考えたりも……、しませんねw。ああいう方たちはまだファンタジーを楽しめていない初心者さんだと卯月は思うことにしております。

    クライングフリーマン さま

    い、いえ。死体蹴りなんてとんでもないッス。あのフレーズだけでその人が想起できてしまう素晴らしい「会話表現」だと。底辺作家としてはフレーズをリスペクトしているのであります。まあ、行き先が地獄方面なのはすでに察していきておりますけどね。

    お二人ともコメントありがとうございます。
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