ほんにお暑うございますこと。
わたくしは朝焼けよりも夕陽を愛す乙女。
夏の、特に今夏の尋常ならざる陽射しに辟易いたしております。
とは申せ、日光を浴びねばビタミンDが摂取できませぬゆえ、カンカン照りの中、わたくしは日傘なぞをさしまして、我が屋敷から町内の公園までお散歩でございます。
チリリ~ン
風鈴の音色が、わたくしの汗をぬぐってくれるようでございます。
日本の原風景でございます。
~~♡♡~~
「ヤマさん、あれってかなり怪しくないですか? ちょっと行って職質かけてきます」
若い巡査は停車しているパトカーの助手席のドアを開けようとした。
「いや、タナカよ。やめておけ」
「えっ? だって間違いなく犯罪予備群でしょ、あれは」
「タナカはまだこの町内の交番に配属になって一週間だよな」
「はい、そうですが」
ハンドルを握った両手に顎を乗せ、ヤマダ巡査部長はため息をついた。
「この町内はさ、ちょっと変わった住民が多いのさ」
「変わった住民って、ヤマさん。あの路地を歩いている姿を見て下さいよ。
あんなデッカいビーチパラソルの露先に、いったい幾つ風鈴を吊してるんですか。
砂浜で軽く五人は陽射しを遮れる大きさなんですよ。
しかもですよ。
あのオッサン、禿げた頭部を一九分けにして、なんで真紅のレオタードにハイヒールを履いてるんですか。
絶対に異常者ですよ!」
ヤマダ巡査部長は憐憫の眼差しで、通りを歩く腹の突き出た中年男を見やる。
「そうだよなあ。常識で考えれば明らかにサイコパスってやつだよなあ。
あのオッサン、いや、男性はさ。高尾つば吉っていう還暦前の人でな。
ほら、この先にある幽霊屋敷、もとい、古民家の住人なんだよ。
自称小説家で、日雇い労働で食ってるようなんだ」
「え? あの誰もが避けて通るボロ屋敷のですか!」
「うん。町内会長も何度か訪問してさ、つば吉っつあんに、『あんたも、もういい年なんだから、早く所帯でももって平穏な暮らしたらどうか』なんて諭してるらしんだけどな。
本人はさ、自身を二十歳半ばのギャルだって思いこんでるみたいなんだな」
「え~っと、二十歳代? ギャ、ギャル?」
「ああ。しかもだ。『職質マニア』でさ。職質されるのが趣味だっていう、風変わりなオッサンなんだわ、これが」
タナカ巡査は金属を舐めたような、不思議な感覚にとらわれていた。
~~♡♡~~
は!
いつのまにか、わたくしったらエアコンの効いたリビングでお昼寝をしていたようでございます。
わたくしが、お腹の突き出た一九分けの中年男性だったなんて!
この夏は夢さえも異常に観させるのでございましょうかしら。
顔を洗ってサッパリと……ちょっと待って。
もし鏡を見て、そこに一九分けの中年殿方が写っていたら……
確か、今年の初夢でも似たような……
小心者のわたくしは、そのままもう一度夢の世界へ入って行きました。
~~♡♡~~
カクヨム界へ、こっそりと戻りつつあります、わたくし。
「goodレビュワー」の称号をいただきながらも、皆さまの御作になかなかレビューをさせていただけず、誠に申し訳ございませぬ。
もすこしお時間を頂戴いたしますけど、必ず完全復活いたしますゆえ、今しばしお待ちいただきとうございます。
そんな中、久々に「契約遂行」なるハッタリホラーを、何の宣伝もせず公開させていただきましたところ、なんとのべ120名ものお方にお目通しいただき、さらにお★さま、温かき応援コメントに素敵なレビューまで頂戴いたしております。
今作は自身でもレビューしづらい内容でございます。
大感激のつばきでございます♡
レビューをいただきました、
春川晴人 さま
紺藤 香純 さま
夕日 ゆうや さま
伊藤愛夏 さま
一矢射的 さま
陽野ひまわりさま
心より御礼申し上げます!
お★さまをいただきました、
のまぐちこやり さま
aoiaoi さま
桜井今日子 さま
成井露丸 さま
白里りこ さま
鶯ノエル さま
RAY さま
ユーリ・トヨタ・アルバチャコフ さま
愛宕平九郎 さま
PURIN さま
弦巻耀 さま
夢見るライオン さま
叶 良辰 さま
心より御礼申し上げます!
猛暑に台風と尋常ならざる状況の我が国。
皆さま、どうぞお気をつけくだすって、日常およびカクヨム生活をお過ごしくださいまし。
チリリ~ン♬