「あっ!」
パソコンに映し出された写真に、僕は言葉を失った。
いい年をした大人が、電車のシートの上に乗っている。
子供のようなその姿は、紛れも無く自分だった。
「やっと見つけた……」
恥ずかしさより喜びに満たされたのは、この写真を見つけるために散々苦労したからだ。
それは一ヶ月前。
電車に乗ると、その車両は僕一人きりだった。
開放的な気分に、つい車窓の景色にかじりついてしまう。
背後に迫る気配に気づかなかったのは、全くの不覚だった。
カシャリ!
驚いて振り向くと、カメラを持った女性が立っている。
ポニーテールが似合う美人だったが、美人特有の横柄な口調で
「この写真、ネットに投稿してもいいかしら?」
と言った。
「えっ?」
「大丈夫。顔は写ってないから」
いや、顔が問題ではなくて、この格好が問題なのだ。
でも、待てよ。こんな美人と知り合うチャンスも滅多に無い。
「あ、ああぁ、あ……」
僕が生返事をしていると、電車が駅に着いた。
女性は忙しそうにカメラをバッグに仕舞い、
「そう。じゃあ、よろしくね」
と電車を降りようとした。
「と、投稿、どこに?」
慌てて僕が聞くと、締まるドア越しに
『近況ノートに画像を掲載しよう!キャンペーン』
と彼女の艶やかな唇が動く。
その日から僕は『近況ノートに画像を掲載しよう!キャンペーン』を探し続けた。
まず『近況ノートに画像を掲載しよう!キャンペーン』をネットで検索してみる。
すると、どうやらカクヨムというサイトのキャンペーンらしい。
なんでも、このサイトに投稿している作者の『近況ノート』というところに画像が掲載できるようになったそうだ。
が、その画像を一括して表示させる方法がわからない。
仕方がないので、僕は片っ端から投稿作者の『近況ノート』を覗いてみた。
が、目的の写真を見つけることができない。
一ヶ月が経ち諦めかけた時、ある作者を見つけた。
ーーつとむュー
そして僕は、この作者の『近況ノート』の中に自分の写真を発見した。
この写真に写っているのは確かに僕だ。
ということは、この『近況ノート』を投稿したのは彼女に間違いない。
つまり彼女と連絡を取るためには、この『近況ノート』にコメントを書くしかないってことだ……
ドキドキしながら、僕はコメントの投稿ボタンをクリックした。