さなコン応募しましたのご報告

 日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト2024 (通称さなコン)に書き下ろし短編を応募しました。

読めないページのめくり方
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22278741

 神戸を舞台に未来日記を手にした女の子ががんばるお話です。
 百合?です。
 さなコンは冬寂の書いたものを初めて評価していただいたコンテストなので、毎年成長をご報告するような形でこれからも参加させてもらえたら…と思っています。

 さて、この作品。冬寂が旦那の帰省に合わせて今年のGWに神戸へ遊びに行ったところから始まっています。最近船好きで、メリケンパークのところで神戸港を巡る遊覧船に乗りまして、そちらで神戸造船所のほうを海から見てまいりました。三菱と川崎重工で日本の潜水艦を一手に作ってます、というアナウンスが流されている最中、和田岬の小さな灯台の横に防波堤に囲まれた小さな浜辺を見つけました。ほんとにちっちゃいんです。
Google Mapだとこちら。
https://maps.app.goo.gl/UKvFAYSBvMzX9eFw8
添付した写真はそのあたりを船から撮ったもの。この裏側がそのあたり。

 この浜辺で元気な女子が海を見つめていたら絵になるだろうな…とふと思い、その女の子はやっぱり家族と来ているのだろう、家族はきっと潜水艦を作っているに違いない…と、どんどん想像(妄想?)が膨らみ、この話ができました。
 当初は西炯子先生の『たーたん』みたいな父娘の関係で、父には秘密がありそれを娘が日記をもとに暴く…という形にしていたのですが、どうにもしっくりいかなくて母娘に書きなおしたのが締め切り10日前…。そこからネタ削りながら書いても1万3000字近くで書き上げてしまい、削れないものを削ってようやく1万字に収められたのが締め切り2日前…という、いつものドタバタっぷりをやってます。
 日記の内容は最終的には読めるようにしていたのですが、そうするとなんかこう弱い感じになってしまい、もにゃってたのですが、読めないことで本人にとってヒントになったほうがおもしろいと思いつき、これも締め切りギリギリで修正しました。そんな感じで締め切り間際で変えたものが結構あります。結果が出たら、削る前のと合わせてこちらに掲載したく思っています。

 今回のお題である日記は、皆さん苦労したようで、無視されたり小道具に留めている方が多いように感じます。冬寂はせっかくなので日記を主人公にしたいという思いがあり、いろいろ練ってました。そのとき出た好きなアイデアのひとつが、日記の大きさが月ぐらいあって、ページめくるだけでも相当なエネルギーと時間がいる(何世代もかかる)のに、出てきたページの意味がわからない…というものでした(笑)。
 そうしていくうちにえすのサカエ先生の『未来日記』をふと思い出し、時間ネタと絡めるのなら王道のタイムリープネタだろうとなりました。時かけやまどかマギカでもやっていて、ネタとして結構どうにもならない(いろいろ考えても誰かがやってる)のですが、こうして挑戦してみました。冬寂さんがこのテーマでやると、こんなにもきっつい話になるのだよね…と書いてて自分で笑いました(笑)。
 そしてもうひとつ。日記というのはログという意味があります。平安時代に書かれた更級日記は、当時の様子や人々の心情がわかる貴重な資料となっています。日記は書いた人が筆を置いても世界は続き、いつか読み返す人がいて当時を振り返ることができるのが日記のひとつのあり方と思っています。
 日記のこうしたところが縦糸としたら、神戸を舞台にしたのが横糸です。神戸という街は阪神淡路大震災で多大な被害を受けました。当時親友が六甲アイランドの実家に戻っていて、危うくテレビモニタの下敷きになるところだったとか、水の供給が止まり5階まで水を運ぶのが重労働だったとか、すごく苦労されていました。特徴的だったのが、被害の格差です。長田や元町、三宮近辺は被害が激しかったのに対し、山側の被害はあまりありませんでした。これがすごく複雑な感情を引き起こします。なぜ助かったのか? 圧死した人を見ながら自問自答を繰り返す人が多かったと聞いています(この辺りは『神戸在住』という漫画で触れられています)。
 神戸を舞台にした以上、これを避けては通れないと思い、当初津波がなかったり、主人公が最後までいることも考えていたのですが、「読めない日記を気にする」=「どうにもならない過去を悔やんでいて、ずっと心が捕らわれている」ということにして、それでも先に進むには…というのが主題となりました。タイトルはそこから決まりました。そして『たったひとつの冴えたやり方』のような凛とした自己犠牲の話になる方向もこれで定めました。

 そしてこの話、
・主人公は元気なふりをしているけれどお母さんを気にして自分を犠牲にしている
・女親友はそれを止めさせたくてそばにいたい
・男親友はそんな女親友を不憫に思い、意識を自分に向けて女親友を助けたい
という地獄のような三角関係になっています。誰かの思いが成就すると、ほかのふたりが死ぬという、なんとも業が深いものに…。いや、最初はさわやかな話になるはずだったんですよ。本当です。信じてください。でもたぶんこの隕石の事件がなければこの三人は『少年のアビス』ぽい、何ともアレな話になってたはずです。女親友はこじらせると柴沢先生みたくなるんだろうなと思っています(笑)。

 あいかわらず声をイメージしないと書けない私なのですが、今回の主人公は小松未可子さんのあて書きでした。元気だけど固いイメージ。女親友は低い声のときの花澤香菜さんで、そのままモーレツ宇宙海賊のコンビでしたね。男親友のほうは松風雅也さんでした。お名前もお借りしています。お母さんは小清水亜美さんでホロとミズキの間ぐらいのテンションかなというイメージで書いています。
 書いているときに聞いてた曲はヨルシカの『老人と海』でした。いい曲なんですよ…。よく聞いてます。もうひとつは、あて書きしていた小松未可子さんが歌う『My sky Red sky』でした。歌詞がすごくこの作品なのです。fhanaさんのコーラスもいい感じの曲です。

 おかげさまで好評で、皆様には五体投地で大感謝です。ありがとうございます。これからも良いものを書いてまいります。

 次に書くものは百合文芸用の作品で、ポーランド侵攻目前のときの小国で、卓上で戦う少女たちのお話になります。だいたい『一九三九年 誰も望まなかった戦争』という本で語られているのが舞台で、「どうしたら戦争を止められるのか?」というのがテーマになりそうです。百合文芸なのにこれまた超絶重たい話で……。でも、このネタはもう10年近く温めていて、人へ話したらわりと受けてたので、ここで書くしか…となっています。

 そしてまたしてもアンソロジーへの寄稿を予定しています。前回書いたのは直前でプロットごと変えたので今言うのは何ともですが、アンソロジーのテーマにあった何かを考えています。
 そんなこんなでカクヨムになかなか投稿できず、どうせなら短編を適宜書きたいなと思っています。もう少しやさしい話を…。なにより私自身が読みたいです(笑)。

 それでは良い読書ライフを!

2件のコメント

  • さなコン。ふうん。
  •  百合文芸に、あのネタをいよいよ投稿されるのですね。内容は以前に伺いましたが、10年温めていたとは知りませんでした。完成を楽しみにしています。
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する