久方ぶりにぶち上げます。
今回は多分に裏話多めのアレです(挨拶
今回はようやっと裏の諸々をぶち上げられるタイミングが来たサティア周りの捕捉です。
キャラ単体の物語としてはひとまず幕が下りてる範疇なので、割と好き勝手にアレコレとな!
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【サティア・イゼット(追記)とその周辺関係者】
・そもそも「サティア」というキャラにとっての「本編」は、シドの宿探しのパートでした。
どこかの段階で、「オルランドで落ち着き先となる宿屋を探していたシドが窮状にある宿屋の姉妹と出会い、宿を奪おうとする悪漢どもから助ける。その後、シドは姉妹の宿屋を拠点に《箱舟》の探索を開始する」くらいのありふれた単純明快活劇シナリオの話を置くのを執筆開始後のかなり早い段階から想定していて、そんな中――完全なその時の思い付きで――で二章の船旅を書くにあたって単発のエピソードヒロイン担当を置きたいなぁとなったときに、「この子を先に出しておいて後で拾う感じの話にしようかな」と思い立った結果できたのが現行の流れ。
三章以降でオルランドという都市の設定が増設されるにつれて「落ち着き先となる宿屋」が「所属する冒険者宿」へ変わるなどしましたが、大筋では初期の導線から外れていないと思います。
以前にサティアのキャラ語りをした時にも言及したように思いますが、つまるところサティアに関しては「二章で登場したキャラクターを後のエピソードで使いまわした」のではなく、「もともと後のエピソードで使うつもりのあったキャラを、先行して二章で登場させた」というのが一連のエピソードに関する経緯となります。
実際にキャラを固めたのは二章で登場させると決めてからなので、サティアを――というよりは、「彼女のポジションに相当する何某を」という方がより実情に近くはありますけれど。
・二章へ登場させるにあたり、サティアは街の外へ遠出する立場という形になるため、設定を「宿屋の姉妹」から「交易商人とその妹」へ挿げ替え。
現在の性格やキャラの内情は、この段階でおおよそを固めました。
もともと姉の方は「病弱な妹(ないし弟)」との対比で気が強い感じを想定していたのですが、この時点で「跳ねっかえり気味な交易商人の小娘、ただし内情は闇というか、疲弊を抱えた女の子」という方針に、書いた側の中では確定しました。
24話の幕間における独白はやさぐれ感がなかなかなのではないかと自己評価しているのですが、この時点だとルチアの薬代やら税金やらは当面の分をこの時の商売の稼ぎで充てるつもりでいたと思われ、その余裕のなさに端を発するイラつきだったと思われます。そんな塩梅です。
・基本的に、「家族がいちばん大切」「周りのひとたちもやっぱり大切」が骨子です。
その存在もそうですが、その「心情」もたいせつに思っています。家族が好きで大切な子。
端々で小狡い真似をする割に抜き差しならないところでは頑なに潔癖っぽい物言いが飛び出すのは、だいたいそのせい。
この辺いまいち上手く書ききれなかったところだろうなと思っており、反省点。
・姉の方と比べると、妹のルチアは難しく考えるところもなく、手癖で書いていました。登場以降ずっと手癖で書いています。
内面というか、思考の積み方を考えないといけなかったサティアに比べ、この子はそうした面で気を遣うところがほとんどない子だったので。
コンセプトは「護られる年少者」「サティアの動機」。
極論すると、この子は「姉に保護される病弱な妹」のアイコンとして存在さえしていればよかったので、それ以外の要素は「保護される立場の、聡明で愛くるしい女の子、みたいに書けたらいいなぁ」という意図に基づき追加した余剰です。
自分の中で「賢くて病弱な女の子」という塩梅でポップしたのを書きたくなった結果、シドとの絡みが存外に増えました。
「助けてあげたくなる子」として導線を引きたいなぁという意図もありましたが、果たしてどの程度上手くできたものでしょうか。
正味、物語上の存在としてのこの子は、血を吐くところが重要でそれ以降はおおむね余興の類なのですよね…
・ついでにぶっちゃけてしまいますと、ルチアは――というより「このポジションに置くキャラクター」は、性別すらあやふやな状態が長く続いており、「弟」として考えていた頃もありました。というより、そっちの期間のが長いくらい。
「頭がいいけれど身体が弱くて姉に保護されてる弟キャラ」ってなんかいいなぁという、個人的なアレがあったので。
結局、最終的に妹に舵を切ったのは、「保護される弟ポジション」が後発のレミールと嫌な感じで重複しそうだなぁという感覚があったため。
レミールをどう動かすかの大枠を考えていた頃、サティアに保護されるポジションが「弟キャラ」だと――レミールとの対比として――後々になってキャラが重複するし、それを回避した場合嫌な感じのノイズが出かねないという感覚がありまして。そのため弟キャラを断念。妹に切り替えました。
ただ、登場順を見るとクロに続いて年少の女の子キャラということで、後発のティーナと併せて年少組の女子比率が一気に上がってしまった感があり。
この辺、調整しくじったかなぁという気がしています。貴様ロリコンかよと。
・ルチアの病気である「ヘルマン氏病」は、結核がモデル。
実在する病気の名前を使いたくなかったというだけの理由で――あまりその方面に詳しくないため、ツッコミどころになるのが目に見えていたから――わざわざ架空の病名を考えましたが、病気の内容が(開示された設定の範疇では)結局ほぼそのまま。気づいた方、普通にいるのではなかろうかという気がしています。
ヘルマン氏病という名前の由来も、結核菌の発見者にして「細菌学の父」コッホことハインリヒ・ヘルマン・ロベルト・コッホが由来なので、見る人が見ればほんとうにそのまんま、というアレでした。
病気周りに関して描写のベースは複数あり、電撃文庫刊「第61魔法分隊」より「セレン・コーコルテルト」と、ジャンプコミックス刊「昭和オトメ御伽話」より「黒咲 常世」。
後者は完全にそのまんまのアレです。はい。
・《Adventurer's INN 灰犬》の亭主ことウェスは、シドの現状を解説するための解説役兼話し相手。
あとはシドの導線を《忘れじの我が家》亭まで持っていくにあたっての中継役。
コンセプトは「普通のひと」。平凡な普通のひと、ないし普通の善人。
悪いことをしたと思えば後ろめたくもなるし、抜きんでた才能を前にすれば嫉妬もする。いずれにせよ、小人物として書いたつもりですが、悪人ではないと思います。
サティアの周辺事情を何とかできる手札を持っていて、かつ躊躇いなくそれを切れるシドの方が「異常」、という想定で構図を組んだつもりです。シドは「ヒーロー」なので。
彼に関してはサティアのエピソードが終わった時点で役割がおしまいなのですが、彼の冒険者宿である《Adventurer's INN 灰犬》に関しては、この先のエピソードでもう少しだけ物語に絡んでくる想定です。果たして上手く使えるかどうか。
・他、サティアの周囲の人々。
お医者の先生は作中で出すにあたって背景はそこそこ決めていましたが、名前を出すとノイズになる気配を感じたので名無しで運用。
実のところコンセプトも何もなく、必要に応じて継ぎ足したキャラクター。
奥さんがいる設定なんですが、こちらは出す機会があるんだかどうなんだか。
モニクおばさんことヘルメル夫人は、「ルチア、面倒を見てくれるひとがいないと生きていけないよなこの子…」というのに直前で気づいたため(当初の段階では「宿屋の姉弟ないし姉妹」想定だったのもあってか、バラバラになっている期間の想定がすっぽ抜けてた)、その場で「いる」ことにしたキャラクター。とどのつまりはこれも後付けです。
後々になって――こちらも必要というか、「いる」と設定したなりの必然に迫られて――出番がまわってきましたが、やはり細かい背景を決めないまま手癖で書いています。
何も難しいこと考えずに書いているのがまるわかりですねぇ!! Foo!!!
過去エピで亡くなったことになっているじいちゃんに関しては、《Adventurer's INN 灰犬》の背景事情を埋めるのと、あとは回想でサティアの話し相手になる第三者が欲しかったので設定。後者に関してはお医者の先生でもよかったかと思うのですが、祖父のように見守ってくれるじいちゃんの方がこの辺はよかろうな――と思い立ったことから現状の構図に。
・《淫魔の盃》亭の女主人と用心棒グンヅ
コンセプトは「使い切りの悪役」。
イメージのベースは「るろうに剣心」の第一話に出てくる連中、といえばわかる方にはおわかりいただけるかなと。もしくは読み切りの方の悪役。
正直、何か悪そうで程よくシドを活躍させられる感じになればこのあたりはどんなんでもよかったので、あまり細かいことは考えていませんでした。
わざわざ宿の女主人を持ってきたのは、そうすれば《ヒョルの長靴》分裂騒動から直接その後の話へ導線を敷けて、かつユーグとロキオムをあらためてシドに接触させるフラグとして使えるな――と思いついたため。
もともと、「《ヒョルの長靴》が歓楽街や色町に近い治安の悪そうなアウトロー宿を定宿にしている」というのは前々から設定として決め打ちしていたので――それこそ、宿の名前を出したあたりから――そこから繋げて話を作った感じです。
女主人の言動を呼び水にしてユーグのかっこいいところも書けたので、私的には満足度高めです。
なお女主人にしたのは、淫魔→娼婦という連想から、娼婦の元締め的な存在というイメージで。
・《淫魔の盃》亭の女主人の愛人であるオーナーこと、ギャングのボスについて。
本当はこいつ、次かその次くらいの大きな話でボス格の悪役――の、うちの一人――として使おうと思っていたのですが、同じポジションになるやつは他にもいるし(※本編未登場)、肥え太ったおっさんどもをみじめなやられ役に据えるだけというのではいまいち面白くないなー、というか「おれは面白くないなァ」と思っていたところに現状のエピローグから開始する導線を思いつき、「よし、やるかぁ!」と思い立ったがために現行の流れとなりました。
かくして何やらえらそうに登場したマフィアの女当主ことリュドミラ周辺の設定は、コミケの入場待機列で並んでる間に思いついたものです。
ビッグサイトへ入れる頃にはおおむね形になっていました。
……今更ですが、本当に大丈夫かなぁ、これ。
・実のところ、この辺の方針の転換はだいぶん急だったため、格の段組みやエピローグ冒頭に至るまでの経緯をどう短くまとめるかが面倒な塩梅になっておりました。
いっそギャングのボスの存在を省くか? とまで考えたのですが、既に公開の分の内容で存在に言及されていたためそれも不可能。
かくして、説明があんまり短くなりませんでした。結果、二話構成に。
いきあたりばったりでものを書いていると少なからずこういうことが起こります!
・グンヅは本編を見ればお察しの通り、一回使い切りのやられ役だったのですが。
リュドミラ周りの設定ができあがったのに伴い、所属を変えて続投という方向へ舵を切りました。彼がどうこうというより、後々の展開を念頭に、彼女の周囲で使える駒を増やしたかったのです。あと、箔付けのつもりでぶん投げた「元奴隷闘技場のチャンピオン」、使い方次第でまだ味がするやつかもしれんな…という予感もあったので。使えるかは分かりませんけれど。
「新キャラをぽんぽん増やすよりは、以前から登場しているキャラを拾って使う方が物語の強度が上がる」、という主義を個人的に信仰している私です。
もちろん程度問題というかやり方の問題はあって、その結果として、「身内で固まってる」感に繋がってしまう可能性も、否めないかとは思うのですが。
・脱線ですが。
私にとっての面白みって、「過去の超克」とか「信念の激突」とか「分かり合えなさ」とか、そういう少年漫画のよくあるやつなのかな…という気がしています。
実を言うと、一回くらいきちんと、当世の流行――というにはそろそろ古びつつある気もしますが――っぽい、「ざまあ系」を書いてみたいという欲があるので、自分にとっての「面白み」になる「ざまあ」を、いずれしっかり探してみたいところです。できれば、流行が完全に風化する前になぁ!
転生系は容易にバランスブレイカーになっちゃうのでやるにやれないのです。長くお付き合いくださっている方にはとうにばれている気もしますが、基本的に「物語の箱庭世界を作りたい」という欲求が第一に立っているもので…だから、世界観をずっと共有しているのです。
・最後にもう一度サティアの話。
二章でサティアを登場させた頃の懸念として、「宿まわりの物語が幕引きになったら、物語の推進力を使い切って出番のなくなっちゃう感じになりそうだな、この子」というのがあったのですが。
いざ「その後」である九章になってみると、シドやフィオレが持っていない情報をベースにがりがり会話に絡んでくれるし、ルチア周りのアレコレや、「冒険者宿として」の動向の方に絡んでくれそうな流れができて、当時の懸念は――少なくとも当面の間は――杞憂になりそうな塩梅となってきました。
とはいえ、おそらく本格的に《箱舟》探索となったら、冒険者としてついていけないこの子の出番はその時点でなくなってしまう訳ですが。
それは他の「冒険者でない」キャラも同様な訳で。
もともとシドの方が、書いているうちに「実績はあるはずなんだけど、『名を上げる』『成り上がる』というに意識が圧倒的に足りていないせいで無名」のキャラだという背景事情が積み上がっていった印象があり、それを補う「シドの名前を売り出す動機を持った子」かつ、「シドの側が、『自分の名前を広めなければならない』と意識する動機になり得る立ち位置の子」であるというのが具体的なエピソードを練って書いてする中でポップしてきたため、サティアに関してはその導線に沿って話を立てていけそうだなぁと見込んでいる感じです。
サティア、当人の懸案事項が片付いて主人公に大きな借りができた途端、率先して素直にあれこれ動いてくれる感じになったので、そうした意味でも今後は使い勝手のいい子になりそうです。
――というか、むしろ現状のこっちの方が、この子の『本質』の部分なんじゃないかなぁ…という気がしています。
私がそう思っているというだけですけれど。