特に読まずとも本編の方には差し障りのないやつです(挨拶
いつも拙作にお付き合いをいただきありがとうございます。
まあ、その、折に触れてやらずにおれぬ設定開陳です。
また遠野の病気が出た感じのアレです。
今回言及する設定は以下となります。
〇《魔女》に関する補足
〇ナナリィの型式番号に関する補足
〇補足というより余談:セリアに関する話
余禄としてお楽しみいただけるものとなっていたら嬉しいことです。
という訳で、以下。
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〇《魔女》に関する補足
152話におけるレーセの去就をもって、ようやっと、標準的な《魔女》の種族としての在り方、及びその倫理を表に出せました。
とはいえ、魔女の倫理を筋道立てて描写する都合もあってレーセの一人語りは多分に自己正当化のニュアンスが強いものとなり、結果的にではありますが、《魔女》の中では――人間の倫理に則って判断した場合――邪悪さが微妙に抜けて、まだしも「真っ当」な側として落ち着いてしまった気がしています。
まがりなりにも実の娘をあっさり捨てた時点で、レーセは描写上冷酷ではあるし、そのつもりで書いていたのですが。
ただ、標準的な《魔女》はもっとひどい感じです。というより、「標準的」な魔女のところで生まれていたら、ミュイは五歳まで生きていなかっただろうなぁという気がするくらいの塩梅で。
なおレーセがミュイを手元に置いて育てていたのは、理由ないし懸念あっての打算によるところも多分にあったという想定ですが、それでもミュイが五歳まで養育されてる時点で、レーセはまだしも「人間的な倫理」に則った存在ではなかろうかな、と。描写上「不遜」として書いた彼女の自己評価も、レーセ自身にとっては――というより、《魔女》という種にとっては、きわめて「真っ当」なのだろうなぁ、と。
で。以上を踏まえて、余談。
「機甲少女」「魔女の花嫁」に登場した《魔女》のフリスは、魔女としては「例外」の側です。
というより、彼女は立ち位置としてミュイと同じ側です。
フリスも判定としては、ミュイと同じく《地に落ちたる魔女の枝》となります。
生まれながらにして魔女の異能を持ちながら、魔女の魂を持てなかった《魔女》です。さらに言えば、《魔女》の倫理では生きてゆけそうにない存在です。
ゆえに、フリスが『師匠』ことイルダーナフのもとへ預けられ、ひいてはシオンと出くわすことになった理由は、ウォルフらに預けられたミュイの状況とおおよそ重なります。
「魔女の花嫁」の時に、フリスの結婚は適齢期の後半――つまるところ、平均初婚年齢からするとやや遅めという形で言及した覚えがあるのですが、これは「機甲少女」本編の、シオンが弟の面倒を見ていてフリスがそれに協力していた期間があったから、というのがまず第一の理由なのですが。
よりフリスの個人的な動機としては、《魔女》である母や姉の存在を在り方を目の当たりにして、また成長に伴いそれらを思い出す中で、
「たとえ誰かを好きになっても、たとえその誰かに好きになってもらえても、それが『運命』でなければ自分は必ずその人を裏切る。自分はそういう生き物に生まれついてしまったんだ」
「好きになったひとに、大好きなひとにそんな汚らしい裏切りを働くくらいなら、わたしは舌を噛んで死ぬ方がいい」
――くらいの論理と倫理を内面化していたせい、というのがありました。
このあたりの懸念がどうにかなったから、幸せ結婚セカンドライフに踏み切れたという塩梅です。
「魔女嫁」の第二エピソードあたりで言及したかった話でした。
コンテスト応募作だったせいで一旦完結とし、かつ結果が出た頃には「くすんだ銀の英雄譚」を書き始めていたがために、これまで書く機会を逸していましたが。
いずれ書く機会があるといいなぁと思ってはいるのですが、いずれにせよレーセの在り方を踏まえると「この辺、フリスはどういうアレなんだ?」というのが割と危なっかしいため、フォローとしてここで言及してしまいます。
物語上で言及できなかった、というの、何ともしまらないなぁとは思うのですが…何とも。
〇ナナリィの型式番号に関する補足
登場人物解説で《L-Ⅶ》と《L-Ⅶ:Rf》を「併記」する形としていますが。
これがどういうことかというと、本編時点におけるナナリィの型式番号は、彼女が《L-Ⅶ》だった頃から更新されていません。
《L-Ⅶ:Rf》――GTVI823-LⅦ:Rfという型式番号は、自身の置かれた現状から逆算したナナリィの「自己認識」になります。
「実際に型式番号の登録が更新されればこうなったはずだが、更新が行われなかった」というのが本編の状況です。
この辺のあやふやさは、本編中でも↓のような形で言及しています――というか、したつもりでした。
以下は、「140.ナナリィ・コーサイト:回想⑬/歓喜のうた――その名は『自由』/わたしの望み/わたしの願い/わたしの夢/わたしの幸い/わたしの/あいのことば」より
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『ところで《L-Ⅶ》――いや、今はもう《L-Ⅶ:Rf》と呼ぶべきかもしれないが』
――《L-Ⅶ:|Rf《リファイン》》。
さしずめ、GTVI823-LⅦ――といったところでしょうか。
茫洋とした眦を笑みの形に細め、彼は問いました。
『ウォルフ・ハーケインに会いたくはないかね?』
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本編で記載している型式番号が設定と微妙に設定と違いますが、まあその、はい。
「自己認識」に基づくナンバーだから、ということでどうかひとつ。
ヴァーベインは、型式番号の変更――というよりナナリィの改修そのものを、正式な形で報告していません。
なのでガルク・トゥバスにおける公式の記録の上では、ナナリィの型式番号は今もって「GTMM713-LⅦ」です。そういうことになります。
彼女の正しい意味での型式番号、GTVI823-LⅦ:Rf――というより、《L-Ⅶ:Rf》という呼称を知り得たのは、おそらくナナリィと直接接する機会があった人間ないしその人間の認識が波及する範囲です。
シルヴィアがナナリィを《L-Ⅶ:Rf》と呼んだのは、おそらく彼女は立場上、セランデル邸にいた《特務》のスタッフから予めナナリィの存在を聞けていたからだと思われます。
正式な型式番号は改修機へと変更されながらも自己認識上は改修前の型式番号を名乗る《L-Ⅵ》メルリィの、ちょうど「逆」になります。
この差異がどこからきているかというのは、「フィギュア」本編ではおそらく言及する機会のないことなのですが。
というより、そもそもこの辺の設定自体、本編の本筋とはあまり関係のないことなのですが…
メルリィは、「《特務》の任務へつけるにあたり、現場での実用に即するよう改修を行った」
ナナリィは、「《人形工匠》ヴァーベインの、完全に個人的な動機と理由に即して改修を行った」
という差異です。
ナナリィが特例的な「自由」を与えられていたのは――ある意味、ヴァーベインにとって『のみ』重要な――改修結果の確認・検証のためです。
ナナリィは《人形工匠》ヴァーベインのモルモットだったのです。
――と、いう話を言及できるキャラが今の時点で誰もいなかったせいで、本編中でこのあたりの話ができませんでした。
メルリィの正式な型式番号をぶっちゃける機会を逸した時から何一つ成長してませんね、我ながら。
ともあれ、以上です。
これまでぶっちゃけてきた設定の範疇と、なんとか辻褄は合わせました。合わせられたはずです。たぶん。
最後の最後で、ウォルフに対しては「GTMM713-LⅦ」として呼びかけているのは、あの瞬間だけは正しく「ウォルフのための機甲人形」だったというか…ナナリィにとっての救いと納得ということで、どうかひとつ。
〇補足というより余談:セリアに関する話
「悲劇的歌劇(オペラ・セリア)」なんてタイトルの話をぶちあげたこともあり、「『オペラ・セリア』から取って『セリア』だったの?」くらいの連想をされる勘の鋭い方がいてもおかしくないなぁという気がしたため言及しますが。
そういうの特にありませんでした。すみません。
セリアの名前は、ランバルドやアーノッドと併せて冒険者パーティの名前を考えていた頃にするっと出てきたものです。
直接の発想元は、長崎の方を旅行していた時に見かけたスーパーの名前だった気がします。
オペラ・セリアは完全に偶然です。
というより、オペラ・セリアは本来「正歌劇」と訳すもので、「悲劇的歌劇」なんて訳し方はしません。少なくとも私がざっくり調べた範囲ではしないはずです。
「オペラ・ブッファは喜劇的なオペラのことで喜歌劇とも和訳される」という説明をどこぞで見たため、「ならオペラ・ブッファは『喜劇的歌劇』で、対になる悲劇主体の正歌劇は『悲劇的歌劇』って訳しても間違いじゃないんじゃないかな!?」というこじつけのもと、字面のかっこよさと分かりやすさを重視で「悲劇的歌劇(オペラ・セリア)」なんて書き方をしたものでした。
…だって、「正歌劇(オペラ・セリア)」じゃタイトルとして意味わかんないうえに、いまいちしまらないですし。
オペラまわりの単語を持ち出すようになったのはキアリィの存在が契機で、彼女の存在はセリア達とはまったく別個に作っていたので、この両者にまつわる設定が「セリア」という名前を介して最終的に関連づけられそうなアレになったのは、真実、偶然とこじつけの賜物でした。
こういうことがあるから、創作って面白いですよね!!!!!