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現代格闘技作品「スーパイ・サーキット」あらすじ

 総合格闘技(以下、MMA)――打撃、投げ、関節技など危険行為以外のありとあらゆるテクニックがルール上で認められ、持ち得る限りの全てを出し尽さなければ決して生き残れない弱肉強食の戦場である。
 日本ではスポーツ・コンテンツのトップにまで上り詰めながら、裏社会とのつながりといった〝黒い噂〟によってファンの信頼を失い、テレビ中継が打ち切られるまでに廃れてしまったMMAだが、東日本大震災の復興支援として開催されたチャリティー大会をきっかけに復活の兆しを見せ始める。
 かつて日本のリングで活躍した選手たちが再集結した新たなるMMA団体、『天叢雲(アメノムラクモ)』――既に一度、地に墜ちたジャンルに対して世間の目は冷ややかだったが、興行を重ねるにつれて人気は着実に回復していく。

 そのような折に『天叢雲』へ願ってもないチャンスが訪れる。
 アメリカを主戦場とする世界最大のMMA団体『NSB』との合同大会が決定したのである。
 名実ともにドリームマッチという趣であり、『天叢雲』にとっては日本MMAの完全復活を全世界に知らしめる絶好の機会であった。
 しかし、その裏では『NSB』に対するヨーロッパ系格闘技団体の買収工作が進行しており、『天叢雲』も欧米二大組織による覇権争いに巻き込まれていく。

 巨大団体の〝代理戦争〟という事態を目の当たりにし、日米MMA選手たちの間に動揺が広がっていく最中、ひとりのルーキーが『天叢雲』のリングで衝撃的なデビューを飾る。
 ペルーのスラム街で生きてきたというその少年は、〝競技としての格闘技〟ではなく〝人間を殺傷する為の喧嘩殺法〟を編み出し、日本国内外に戦慄としか表しようのない闘いを見せつけた。
 一部のスポーツメディアは彼のことを次世代のエースのように持ち上げ、デビュー戦で発揮した暴虐の異能力を『スーパイ・サーキット(死神の回路)』と呼び始める。

 殺戮と破壊の力を宿した少年は、見る者、対峙する者の心を動揺させずにはいられない。
 『天叢雲』と敵対していた地下格闘技団体までもが彼の存在に惹きつけられ、その波紋は現代格闘技界の光と闇をも浮き彫りにしていくのだった。

 世界各地で道場破りを繰り返す謎の武術家
 格闘技王国オランダが誇る聖家族
 莫大な利権を得る為には手段を選ばないスポーツマフィア
 最新鋭の医療を悪用するドーピング
 紛争の悲劇から立ち上がろうとする難民アスリート
 格闘技というジャンルそのものを標的とした正体不明のテロ行為
 MMAを敵視して法規制を訴えるアメリカ大統領選挙の有力候補
 そして、リングの内外で嵐を呼び続ける『スーパイ・サーキット』の少年――。

 世界に渦巻くリアルな情勢を巻き込みながら日米MMAはドリームマッチに向けて白熱の一途をたどる。
 それは現代の格闘家たちに「何の為に闘うのか」を、組織を運営する者たちには「誰の為に格闘技はあるのか」を問いかける〝心の旅路〟でもあった。
(企画書より抜粋)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884734267

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