こんにちは。何だか今日はフラッシュバックが多い飯田です。病気になる前、僕は病的に物を覚える人間で、薬物療法を受けるようになってから健康的に忘れられるようになったんですけど、やっぱりたまにこういうのが起こっちゃうんですよね。昔の辛い記憶が波のように反芻されて心がボロボロです。
掲題、リハビリ短編を完結させました。思ったより長くなってしまいましたが満足の行く出来です。以下。
『君の瞳はあの日の瞳』
https://kakuyomu.jp/works/16816927862554830522『カギ娘の事件簿』『シャロンが言うことには』の主人公であるカギ娘ことシャロンちゃんの物語です。以下、いくつか項目に分けて制作秘話。
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・あらすじ
本作、『君の瞳はあの日の瞳』の主人公はオフィーリアという女の子なのですが、在学中に母親が亡くなり学費が払えなくなります。仕方なく退学……と思っていたところ、謎の人物により奨学金が与えられ、無事卒業まで辿り着けます。
卒業後、教師として働きながらお金を貯めたオフィーリアは「恩返しがしたい」と奨学金の送り主を探すためにシャロンの探偵事務所へ……という流れです。
・世界観
もともと『カギ娘の事件簿』自体がロバート・ダウニー・Jr.版の『シャーロック・ホームズ』の世界観をイメージしているので(あれって結構スチームパンクなイメージありましたよね?)、どうしてもというか、ホームズに寄せたくなる気持ちはあったんです。『シャロンが言うことには』はちょっと海外童話っぽくなったのですが、『君の瞳はあの日の瞳』では本来のイメージである産業革命下のイギリス、それからシャーロックホームズの世界観を出してみたかったので、冒頭のオフィーリアによる依頼シーンでは即席の推理劇を見せるシーンを入れてみました。他にも、推理の過程をアブダクション(観察された事実に対してもっともらしい最良の説明を考える)に頼るといったところがホームズらしいところかな。
・キャラクターについて
三人のイケメンが一人の女性にアプローチする、という絵はやっぱり僕の好みというか、逆ハー結構好きなんだと思います。ちなみに三騎士の中だと僕は圧倒的にフィリップスが好み(というか友達になれそう)で、どうしても彼のセリフが多くなってしまいました。
シャロンの活躍は冒頭のオフィーリアに対して即席推理をする場面で満足してしまったというか、シャロンの頭脳を魅力的に書けたのは多分『カギ娘の事件簿』本編以上の出来栄えで(カバン猫のお母さんみたいな親馬鹿っぷりですけど)、我ながらほくほく。ラストの推理シーンもシャロンらしい「論理で殴ったりしない」感じがあって僕は好きです。
・アルドリッジ総合学校について(熱く長く語りますので飛ばしてくださっても結構)
前のノートでもお話ししましたが、作中に出てくる全寮制の学校「アルドリッジ総合学校」は僕の母校である神奈川県立湘南高校がモデルです。全寮制でも何でもなくただの公立高校なのですが、一年生から三年生まで、例えば一年一組二年一組三年一組が1色という振り分けで8クラスが8色(僕の弟の代では9クラス9色になっていました)に別れて体育祭で火花を散らすのはまさに寮別対抗戦というイメージで、三年間の高校生活の集大成として大学受験ではなく体育祭を挙げる生徒も多いくらいでした。体育祭以外にもクラス対抗戦が二カ月に一回くらいのペースで開催されていて、僕も選手としてクラス対抗戦に出たこともありました。
その分僕の母校は進学実績を犠牲にしているというか、一応進学校ですので早慶は多いのですが国公立の方はあまり聞かない(という僕の勝手なイメージ)です。現役浪人含め東大に行った人ももちろんいるのですが、僕は中央大学ですしピンキリというか、同じ神奈川の進学校の横浜翠嵐に比べたら進学実績は劣るような、そんなイメージの学校です。
でもその分学校生活は楽しかった思い出です。三年間テーマパークみたいな。
特徴のひとつに校則の緩さがありました。標準服という規定があってそれを満たしていれば後は自由、公式の場でのみ正装であれば後はどんな格好をしていてもお咎めなしといったスタイル。
全校集会なんかもクラスごとに並んで教師が引率して、ということが一切なく、銘々勝手に会合場所に集まるイメージ。もちろんサボってスマブラしてたり恋人としっとりしてたりなんて人もいたのですが、そういう人ほど成績がよかったりして、面白い学校でした。
僕は剣道部、文芸部、新聞部、ジャグリング同好会(後に部活に昇格)に所属していて、剣道部と文芸部は色々あって足が遠のき、新聞部としての活動歴が多分一番長いんじゃないかな、という印象です。なので『君の瞳はあの日の瞳』のフィリップスに感情が入りやすかったというか、ほとんど昔の感覚で書きました。
高校生の新聞部って二極化できて、学校新聞コンクールみたいなのに応募する割と真面目な部活もあれば、学校の部活実績やら先生の声やらを発信する校内通信に特化する部活もあるんです。湘南高校の新聞部は元々前者、学校新聞コンクールを目指して活動していた部活なので部室にトロフィーがあったり、よその学校から見学の依頼があったりするような部活だったのですが、僕のいた頃は完全に校内通信部と化していて、僕は部活のインタビューや先生へのインタビューなんかを通じて校内のゴシップ通になったりしていました。今、テレビなんかに出ている有名な人の学生時代のゴシップを持っていたりもします。
去年、創立100周年を迎えた学校なので歴史が長く、新聞部も歴史が長いです。僕の家には多分「湘南高校マニアがいたら垂涎もの」の滅茶苦茶古い学校新聞がとってあります(保存状態は悪いですが)。
そういうわけで同窓会などの繋がりも強く、高校卒業、成人式、大学卒業、何かにつけてパーティが開かれる学校です。コロナじゃなかったら創立100周年パーティとかもあったんじゃないかな。僕が呼ばれていないだけでやっていたのかも? この高校を舞台にした作品もいずれ書いてみたいと思います。
・トリックについて(ネタバレ注意!)
『君の瞳はあの日の瞳』のトリックらしいところは手紙の件だけなのですが、この元ネタは『推理作家ポー 最期の5日間』という映画で「髪の毛が磁石にくっつくのは何故?」という謎かけがあってそれをモデルにしました。「髪→紙」なんていう呆れるほど適当なすり替えですが、それでも「手紙がくっつく」という部分でミステリーっぽさは出たかな、と。
逆に言うと手紙以外の要素は全て状況証拠的というか、推理の過程がアブダクションであることをいいことに結構抜けのある論理になっていると思います。容疑者も数が限られているから、犯人当てもしやすいだろうし。
それでも「ミステリーらしさ」が出ていたような気がするからいいかな。ミステリーとしての満足度も僕としては高くできています。短編ミステリーはこれくらい切れ味がよくないと。
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さてさて長く語りましたが、リハビリはこんなところかな。明日からは平常運転に戻れればいいな、と思っています。手始めに『カギ娘』と『Six Bullets』を更新しようかな。他にも書きたいものがたくさんありますし。
以上長々とありがとうございました。
今週が皆さまにとってよい週になりますように。
※画像はやっぱりアイコンちゃんことシャロンちゃん。