大学が春休みなので、色んなものに触れる日々を送っています。谷崎源氏、町田ひらく、漫画ナウシカ、マヤデレン、溝口健二、佐内正文、エルンストのコラージュロマン三部作…ここ最近触れたものをこうして並べてみると、実に節操のない貪りかたで、百花繚乱の美に慰められる毎日です。
近いうち、文芸批評も読みたいものです。明日にでも図書館に行こうかなあ。本居宣長、小林秀雄、保田與重郎に興味がある、というふうに書くとなんとなく保守的な感じがしますが、別に思想的なシンパシーを感じたりしてこの三人を読みたいのではなくて、柄谷行人だの蓮見重彦だのは私には難しいので、理よりも情の批評を読んでみようというわけです。
批評への関心が芽生えましたのは、このあいだちょっと機会があって保田與重郎の『雪国』評を読み、深く感動したからです。手もとにあるので引用しましょう。
「―美しい作品に鬱結の情を淡々とすてさりその中に深い呪詛を描きすてさる名人の極致」云々。
言い得て妙ですね。雪国の、もっといえば川端康成の全ての作品の、髄の侘しくふるえるような何とも妖しい魅力を語り切っているように思えます。保田はこれに続けて、鬱結の情を捨て去ることの出来ぬ宿命を背負った評論家である自分を恥じていますが、しかし、この文章で雪国の生命がいくらか救われているのも事実でしょう。無論、雪国は古今に類を見ない名作だと私も思いますが。
目星をつけた文芸批評を一通り齧って、それから、自分でも批評まがいの遊びをしたいとも企んでおります。自分の好きなものを自在に語りながら、カクヨムで出会った作品などについても書いたりできれば、なんと楽しいことでしょう…。