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無双の細道こぼれ話第三十回:知識と私

 ちょっと自慢話になってしまいますが、私の叔父は弁護士になって、そこから裁判官になり、また弁護士に戻ってというなんかスゴい人でした。

 あまり会って話をする機会はありませんでしたが、私が高校生の時に法事で出会い、最近扱った事件でタンカーから流出した油の量を算出するのに三角関数を使ったみたいな話を聞いた覚えがあります。

 おそらく一見役に立たないと思える学校の勉強もそうじゃないんだぞと、私に伝えたかったのでしょう。
 
 まぁ、残念ながらおバカな私は「へぇ」と面白く話を聞いただけにすぎませんでしたが。
 
 そんな偉大な叔父も十数年前に癌でこの世を去りました。
 私はすでに上京していて仕事もあり、大阪で執り行われた葬儀には出られなかったのですが、遺骨を骨壺に拾い上げていた時に母がぽつり「お兄ちゃんが一生懸命に蓄えた知識も身体と一緒に灰になっちゃったんだなぁ」と呟いたそうです。
 
 私はこの言葉がなんとなく忘れられません。
 その理由は分からないです。無常観と言うわけでもないし、死んだら無になるんだから勉強しても意味がないとも思いません。

 ただただ、忘れられないのです。心に染みついているのです。
 
 あ、でも今これを書いていて久しぶりに叔父のことを思い出していたら「死んだら無くなるけど、知識は人生を彩ってくれるよ」と叔父が語りかけてくれたような気がしました。

 ですよね、私も今回「無双の細道」を書くにあたって科挙や松尾芭蕉のことを調べましたが、今まで知らなかったことを知るのは改めて楽しいと感じました。
 
 と言いつつ、その知識欲の権化を敵キャラにする私はなんなの、サイコパスなの?

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