https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093072801038691「僕を貶めるための嘘じゃないという証明がほしいところですね。上手く言いくるめて、僕を謀るつもりかもしれない。ネストからの脱走者を捕まえたと報道されれば大きなニュースになる。貴方や貴方の持っている会社の良い宣伝にもなるでしょう」
「証明……証明か。それは難しいね。数式やプログラムじゃないんだ。人の思考や心にどんな担保が適切なのか、僕には分からない」
「あなたの弱みを教えてください。知られれば確実に命がなくなるような、そんな弱みを。でないと信用できない」
「提示できなければ?」
「ここで死にます」
自分を人質にし交渉を持ちかける様は滑稽でもあった。また、自分を殺そうとした人間の自殺を防ぐために手を焼いている俺自身も客観的に見たら異常だろう。だが俺は彼を死なせたくなかった。ネストの人間だからというのもあるが、何故か彼を失いたくなかったのだ。ネストで会った時に抱いた不思議な感覚が再現されたのだ。