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第10話 神学校へ6

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16817330658006211621


 ハルトナーはまだ子供だったしジィーボルトは変人だったためコミュニケーションを取るうえで問題は発生しなかった。しかし今度は正真正銘の真っ当な貴族がやってくるのである。この日に聞いたのだが、ズィーボルトご婦人は遠方にある国フィレンチの貴族、ミィディッチ家の五女という話だった。このミィディッチ家は王族の血筋である。さすがに直系というわけではなく、枝分かれしたうちの一つらしいが、それでもやんごとなき血族である事には変わらず、これまでの人生の中で出会った人間の中でもっとも高貴な存在であるのだった。上位人類、上級国民を目の当たりにするにあたって緊張しないわけもなく、恐れないわけもない。俺はハルトナーより一歩後ろに下がりこそこそと目立たない位置に立ち、肩を狭めて立つのがやっとであった。

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