最初に格好の悪い事実を言ってしまうと、私はプロのライターだったが、望んでライターになったわけではなかった。
大学卒業後の就職活動ではゲーム会社を主に回っていた。しかし失敗して、どこにも採用されず、他に生活費を稼ぐ手段がなかったから、仕方なくプロになったのだ。
90年代半ばごろの話だ。
そもそもの話をすると、普通はライターと言ったらどこかの編集プロに所属して、そこで仕事を覚えていくものだ。
そうして経験を積み自信をつけて、編集プロから独立した人間がフリーライターになる。
しかし私は最初からフリーライターだった。なぜって、フリーにしかなれなかったからだ。
仕事にありついたきっかけは、学生時代の後輩のコネと、商業誌で論文の公募へ応募して入選した実績があったこと。ただそれだけ。
何しろコネも少ないので、単価の多い仕事が取れるチャンスは、ゼロに近い。プロの底辺と言っても言い過ぎではなかっただろう。
当然、それだけでは食えないからバイトで生活費を稼ぐ。
子供時代には小説家になりたいなどと思っていたものだが、ライターとしての活動をするうちに、こんな仕事で食べていくのは嫌だと痛烈に思うようになった。
ライターであろうと小説家であろうと、実績とコネのどちらかがなければ、編集者の一存でいつでも首を切られてしまう。不安定な立場なのだ。
面倒を見てくれる、年齢の近い編集者と仕事ができていたことだけは幸運だった。おかげでなんとか食べてはいけた。その当時、仕事を回してくれた編集者の方々には、なんとお礼を言っても足りないだろう。
――とはいえ、先行きは真っ暗だった。
早く就職したいなぁ。どこかのゲーム会社に拾われたいなぁ。
これが、当時の私の口癖だった。
その状況が変わってくるのは、90年代の末ごろからだ。