『嫁入りからのセカンドライフ』とか『世界を変える運命の恋』とか、恋愛を主題にしたコンテストが多いですね。
私は作中で恋愛要素を入れるのは好きですが、恋愛そのものを書けないなあ、と思いまして。
私が書く恋愛要素は敵側が多いと気が付きました。
『クルシェは殺すことにした』の九紫美は、愛する男のためなら邪魔者絶対殺すウーマンでした。『花守』のカガミも同じタイプ。
善悪は別にして、どんな非情なことでも行える原動力として愛の力というのは私のなかでは凄く説得力があります。
なぜ、そのようなことを言うと恋愛の力に関する実体験があるからです。
かつて私が若く、目には光が溢れ肌にはハリがあり、お尻もキュッとしていた頃のことです。
私は介護の仕事を初め、そこで教育係みたいになった人に恋をしたのです。
仕事のことを教えてくれるため、二人だけで長い時間いることが多かったのもあります。
すっごく明るい人で、私が「(利用者さんの)入浴準備できましたー!」と言うと、頭の上で両手を合わせて丸を作り「オッケーでーす!」と返してくれたのが印象的です。
その人が仕事を辞めて地元に戻る前、一緒に仕事をする最後の日でした。
私は早番で朝の7時前には仕事に入る必要がありました。4月かそのあたりで、雪国の早朝ということもあってかなり寒い朝でした。
私は駐車場から施設に入る道を歩きながら、今日がその人と最後の仕事をする日だというのを意識し、それまでのその人とのやりとりを思い返していました。
空気が清涼さを肌に感じさせ、まだ太陽が赤みを残している時間。
何気なく空を見上げると、空に浮かぶ雲が私の目には虹色に見えていたのです。
驚くよりも、自身の心の高ぶりからすれば当然のことだ、という納得する思いがありました。
その日は一日中満ち足りた気分で、これが幸福か、と仕事をしながら思いました。
結局、その人とは何事もなく、最後に私の一番好きな『星の王子様』を手渡して別れました。
……ということが昔あったのです。
年を食った今では、目は光を失って汚泥のように淀み、肌はくすみ、お尻は無くなりました。
というわけで、心が人間の認識にどれほど影響を及ぼすかを実感し、私は他者を愛している人間のエネルギーというものを信じています。
それを悪役側の原動力にしてしまっているのが残念ではありますが。
もう一度、私が本気で恋をして、雲が虹色に見えたときのエネルギーを手にできれば、絶対に誰にも負けないという自信があります。
そのエネルギーを創作に使えれば、絶対に負けないんですよ。
自分が書いた作中の恋愛で一番好きなのは、『なまくら冷衛の剣難録』の冷衛と美夜ですね。
美夜は冷衛に振り向いてほしいけど、小竜を見捨てて美夜と一緒になろうとする冷衛は、すでに美夜の好きな弱い者のために戦う強くてやさしい冷衛じゃないという。
結ばれない悲恋ではありますが、美夜としては幸せだったんじゃないかなー。
これからは、恋愛のあるヲトナの作品も書いていければいいなあ、と思いました。
でも、お前が書きたいのは(昔の)ラノベだろ。
さて、珍しくマジメな話題を書いてしまったので、みなさま「小語のやつ、頭でも打ったのか!?」と心配されているかもしれませんね。
ふっ。打ったんですよ。