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犬神の家の人達

 半年ほど前、「登場人物の名前の秘密」という近況ノートを公開しました。

 そこでは、これまで執筆してきた連載物の登場人物の名前の裏話をお話しましたが、現在更新中の四谷小春シリーズ第三章『犬神の家』に登場する人達にもまた、きちんとした由来を込めています。今回は、そんなお話。

・「犬養家」という苗字

 推理作家・横溝正史が作り上げた日本の名探偵、金田一耕介。その作品の一つに『犬神家の一族』という長編小説があるのは御存知かと思います。今回の話を執筆するうえで、「犬」が重要になってくるため、この『犬神家』に近い読みの苗字を探しました。

・犬養家の一族たち

 犬養家の人達にも由来があります。一人ずつご紹介しましょう。

【犬養柴乃】
 四谷小春と同じ大学に通う一年上の先輩。二十歳の彼女は名前から分かる通り「柴犬」から。「柴」という字を用いて作る名前を探しました。

【犬養牧子】
 柴乃の母親で現在は故人。彼女の由来は「パーソン・ラッセル・テリア」。ジョン・ラッセルという牧師の名前が由来のこの犬は「パーソン」が「牧師」という由来であり、「牧」という字を用いた名前にしました。

【犬養俊敏】
 柴乃の父親で個人。一見「しゅんびん」と普通は読んでしまうが実際は「たかとし」。彼の由来は「ボルゾイ」という犬。このボルゾイはロシア語で「俊敏(しゅんびん)」という意味で、これがこのまま名前に反映されています。

【犬養一蝶】
 犬養家に住まう老女。金之助の夫であるが……。彼女の由来は「パピヨン」。ご存知の方もいるかもしれませんが、パピヨンとはフランス語で「蝶」という意味があり、そこから来ています・犬種としては、耳が蝶の翅のようだからその名が付いた、とか。

【犬養金之助】
 犬養家の家督であり一蝶の旦那。彼の由来はみてのとおり「ゴールデン・レトリバー」。レトリバーは狩猟犬の事を差していて、ゴールデンはそのまま毛並みが黄金色だから、とのこと。

【犬養穂積】
 柴乃の母・牧子の妹で、レオナちゃんの母親。彼女の由来は「ケアーン・テリア」。ケアーンとは「積石」のことで、「積」を使った名前に。スコットランドでは積み石の間にいる小動物を捕まえる為にこの犬を使役していたことから、積み石を表す「ケアーン(人の手によって積まれた石のこと)」が犬種名についたそうです。

【犬養和騎】
 温和そうな穂積の旦那で婿養子でもある彼。その由来は「キャバリア」という犬。正確な犬種名は「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」というこの犬の「キャバリア」の部分は「騎士」という意味があり、このうちの「騎」を用いた名前に。

【犬養レオナ】
 おとなしそう……に見えて実は母の穂積に似た快活な少女、レオナ。彼女の由来は「シーズー」から。シーズーは中国原産の犬で、中国で「獅子狗(シー・ズー・クォウ)」ということから「シーズー」。レオナのレオは獅子の事を差します。人名に使われる「レオン」は、ライオンを由来としたラテン語の人名らしいです。

【田北京子】
 犬養家に仕える女性。あまり話に絡んでこないように見えるが……。彼女の由来は「ペキニーズ」。名前の如く「北京」を由来とするこの犬、このまま苗字と名前を合わせると「北京」になるようにした名前にしました。



 というわけで、今回の登場人物は全員「犬種にまつわる語が名前に入っている」となっています。こういう名前に意味を持たせて作るのが大好きなので、上手くこじつけて名前をつけてしまいます。もはや性分です。


 そうそう、前日譚でもある短編『鳴家の硝子』に登場した人物たちは、

【安達友久】
 四谷小春の数少ない大学の友人のため、名前に「友達」が入る名前に。

【鳴瀬小夜子】
 タイトルの『鳴家の硝子』から、「鳴」の使われる苗字を。せっかく「鳴」という字を使ったので、実在する鳥「サヨナキドリ(小夜啼鳥)」から拝借して「小夜子」に。

と、こちらはそこまでひねりを入れず(当社比)に命名しました。


単なる小ネタ程度ですが、「ああ、だからこの名前にしたんだ」と思いながらまた読み返してみると面白いかもしれません。



・・・・・・。

おっと、忘れていました。犬養家の飼い犬、「スケ」を忘れていましたね。

【スケ】
横溝正史の作品の主人公「金田一耕介」から。また『犬神家の一族』に登場する人物「犬神佐清(すけきよ)」から。

ところで『佐』って、「たすける」って意味があるそうですよ。え、だからなんだって?


それは、『犬神の家』を最後まで呼んでからのお楽しみに……。それでは、次の裏話ノートでお会いしましょう。

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