私は、20世紀末に一度筆を折りました。その時に残しておいた数作の小説は、1作を残して、師匠である「芥川賞」候補に5回ノミネートされた村上政彦氏の添削を受け、改稿を終えました。
最後の1作は、「感性だけ」で「現代詩的」で「散文的」な、かつてなかった「わけわかめ」な「感覚的」な文章で書いてみたい。という漠然とした文体を求めていました。
しかし、どう転がしても、自分の頭の中にある、その「感覚的な文体」の表現ができずに、25年放置しました。
去年、師匠とこの小説を改稿していたのですが、直せば直すほどただの「きゃぴきゃぴギャル」の話になっていったので、師匠の方から「この小説は、僕が手を入れたらダメになる」と言われ、私も、自分が目指している文体とは遠くかけ離れてしまったので、完全にリセットしました。
そして、ほんの数ページですが、「感性だけで」「感覚的で」「現代詩的で」「散文的で」書いて、師匠に「こういう感じの文章が書きたいんだ」と送りました。
師匠から、「現在、詩の復権が進行しています。アメリカでは、ヴァースノベルという、詩と散文で書かれた小説がいくつか話題になっています。柊さんがお書きになりたい小説が、うまくゆけば時代の流れとクロスするかもしれません。この序章は興味深く読みました。一度このスタイルで書きあげてみましょう。現在出版されているヴァースノベルで話題になっているのは、アン・カーソンの『赤の自伝』です。参考になると思います」
と返事をいただきました。
「赤の自伝」は、私が書きたいと思っていた文体にかなり近く、しかも2022年の「ノーベル文学賞」最有力候補作品でした。
カクヨム内でも、自主企画で「ヴァースノベル」があり、12作掲載されていました。すべて読みましたが(つまり読める程度の分量しかない)、ただの「長詩」か「短編」でした。「詩」と「散文」と「小説」のハイブリッド形式「ヴァースノベル」とは言えませんでした。
私は長編のヴァースノベルに挑戦しています。
おそらく、ヴァースノベルというジャンルを知っている人は非常に少ないでしょう。そして書ける人もおそらくまだそんなにいないと思います。
だからこそ、今、私はヴァースノベルを書きあげないといけません。序章を読んだ師匠が、「時代とクロスするかもしれない」と指摘しているので、誰よりも早く、ヴァースノベルを書きあげないといけないと思っています。
人気ジャンル「異世界もの」から撤退し、新ジャンル「ヴァースノベル」に挑戦します。すでに一稿は出来上がっているので、近々師匠に送る予定です。