幸まる様の作品『遠き鯨の国』を読みました。
このお話は、終わりのないもののように思いました。誰もが納得出来る答えなど出ないのでしょうね。
それでも争いのない世の中にしたければ、復讐心、激しい怒りや悲しみに耐えて、どうにかして互いの矛を収めるしかないのでしょうか?
どこかで終わらせなければならない。でも、納得出来る終わりなどないから中々終わらない。そうしている間に、新たな犠牲が出てしまうのでしょう。
でも、救いのない話ではないです。二人の王子が沈黙したのは、戦争を理解しているからでしょう。そう簡単には割りきれくても、どうにかして戦争という沼から這い出ようとしているように思えました。
心が疲れ果てているようでしたし、現状を憂いてもいる。だから何とかしたいけど、だけど、という葛藤。
描写については、やはり鯨の幻影が印象に残りますね。
怨みや悲しみを煮詰めたような彼等の現実との差によって、きらきらと輝く水しぶきの中を泳ぐ鯨の姿は余計に際立って見えます。
そして、美しい幻影が消えた後に残るのは現実に苦悩する人間の姿、苦知らずの国など夢のまた夢です。
最後に関しては、希望は必ずあるというような、未来の希望を描いた終わり方ではなくて、いつか希望に繋がる答えを見つけようとする人間の姿を描いた終わり方のように私は感じました。
まとまりもなく、非常に長くなってしまったので、こちらの方に書きました。