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独り舞台

 独り舞台云々と、私の記事でもよく言いますよね。
 当たり前のように発せられるこの単語、いったいなんなのか。
 自分でもよく分かっていません。なんとなく使っています。
 辞書の通りの意味というより、字面で察してください。
 本当に独りで踊っているという感じの文脈です。スポットライトを浴びながら、自分だけの物語を一人で演じる。その過程や結末は誰にも認知されない。
 要はキャラ個人のストーリーに値するのでしょうか。

 ほかに独壇場という言葉があります。
 結果的には似た意味になるでしょうが、厳密には差があるかもしれません。
 なにせ独り舞台は隔離された場、メインストーリーの流れやラインに載っていません。対して独壇場はストーリーの延長線もしくは真ん中で目立つ、という雰囲気なわけで。
 どちらがよいかと聞かれると、独壇場のほうですかね。

 独り舞台はキャラを活躍させるというより、むしろ隔離するために用いる場合が多い気がします。
 人気があり注目度の高いキャラ。だけど、ストーリーに影響はもたらさないし、目立ち過ぎる。下手に出すと他のキャラを食ってしまう。
 そういうときにキャラ個人のストーリーで魅せるわけです。いわゆる単独メイン章を作り、専用の場を設ける。その物語では主役として扱い、そのキャラのために全ての描写がつむがれる。
 見せ場も確定で作られ、ファンは喜ぶ・興味のない人はスルーできる。ウィンウィンじゃありません?
 あとは、そのキャラに課せられた伏線を消化するために引っ張り出したり。逆に、伏線を張るために利用することもあるでしょう。

 個人的にはキャラにとってストーリーは、捧げられるものであり、私物化するものではありません。
 キャラを魅せること自体が目的なら、この方式がベストだと感じます。
 そりゃあ、メインストーリーで派手に暴れるほうが目立つのですが、
 なんの役割もないのに出したって、仕方ないでしょう。
 キャラが見たい人だけ見ればいい。個人の物語に無関係な人を巻き込む必要はないし、内輪で完結させれば、それでいい感じで。

 ただこの形式、キャラの魅力を引き立てる効果はおまけ程度だと思います。
 単独で掘り下げが入り、さらに好きになったパターンもあるでしょうが、効果を発揮しない場合もあるのですよね。
 毒にも薬にもならない話だったり、いい話だなーで終わったり。
 もちろん、クオリティが高い場合は満足度が高いし、それでいいのですが。
 それでもおまけというのに変わりはありません。
 そもそも、キャラストーリーに触れられないパターンもあるでしょうし。
 キャラを引き立てるにはメインストーリーを使うのが一番です。

 だからといって、メインストーリーにキャラストーリーを割り込まれても、困ります。
 独り舞台はストーリーの流れの中で魅せる構成と、相性が悪いんですよね。
 構成を俯瞰して見れば、分かると思います。
 話の始まりと終わりを繋ぐ大きな線があるとします。そこに全く関係のない、隔離した話がぶち込まれるわけで。
 そりゃあ、違和感あるでしょう。
 なんだ、このストーリーから浮いた話は? となるわけです。
 独り舞台がよくないのは、ここです。

 実質的なサイドストーリーなのですが、サブプロットとの違いは
 メインストーリーと合流するか、否かですかね。ここでなんの影響も与えず、フェードアウトするのなら、その話は無駄となります。
 しかし、明確な形で反映され、全てのシーンが意味を持つのなら、それはよい構成です。

 これでメインストーリーの出番を消費されると、
 本人は物語に介入・参加ができず、見る側からはヘイトを煽る。
 もったいないんですよね。
 これだったら最終盤にスポット参戦するサブキャラのほうが、まだおいしいです。
 というか、物語に参加しないキャラに、スポットライトを当てる意味ってありますか?
 やっていること、打ち切り漫画でよくやる『サブキャラクターの掘り下げ』ですよ。

 私が思うにこのキャラは他のキャラと同じ土俵に立てていません。顔を合わせる資格すらないわけです。
 当然、レイヤーも違う。勝負が成立していない=対比も成立しない。
 二人でゲームをしようにも対岸に相手がいないと、勝負にならないのと同じように。
 対比キャラは同じ舞台に立って、ようやく対比として成り立つ、のかもしれません。
 ……あくまで考察です。
 ここで語られるのは『独り舞台で終わり、物語に関われずに終わったキャラ』という字面だけです。
 特定のキャラに関して言っているものではない、と、とらえてください。

 さて、いままでも散々独り舞台のネガティブキャンペーンをしてきたわけですが、
 今度は逆に有効活用の方法について、話しましょう。
 独り舞台は物語の中心人物・掘り下げると全てが解き明かされるタイプのキャラに用いるのが、最適です。
 クライマックスで独壇場となると、全部の印象を持っていかれます。
 そこでキャラを掘り下げ、テーマを語る――そのキャラを通して、だからこの話はこういうものだったんだと、メッセージを伝える。
 それによってストーリーは完成するわけです。

 要は、謎を抱えている・本性を見せていない・どんでん返しが待っているキャラに、満を持して焦点を当てる。
 無理やりスポットライトを当てる・出番を増やすというより、盤面が整って表に引っ張り出される、といった印象です。
 ふさわしいポジションにいるキャラなら、自然と話の中心になるでしょう。
 逆にストーリーと関係ないキャラが独り舞台の構図になると、舞台から排斥されます。
 気をつけてください。

 ちなみに、やるのなら、第三幕です。
 見せ場が終盤に近づくにつれて、おいしい度が上がりますから。
 こういう方式は映えます。インパクトも出ます。
 伏線を仕込み、溜めて溜めて、一気に放出するわけですから、そりゃあ。

 第二幕でやるのなら退場して盤面が変わるキャラにするのがいいでしょう。

 とにかく、物語の中心で独り舞台になるのが、ベスト。
 本人がテーマの象徴、物語全体を背負う形。
 いずれにせよ、物語に深く関わっている・中核にいるキャラが条件です。
 脇役が独り舞台を演じたら、詰みます。おとなしくサブシナリオに回ってください。
 では。

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