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平安時代を語る⑬(「月が消えた夜に――」連動企画)

平安時代は物ノ怪やあやかし、妖怪などがゴロゴロとおりました。
もっとも有名な妖怪といえば百鬼夜行でしょう。

百鬼夜行は近年では「ひゃっきやこう」なんて読みますが、平安時代や鎌倉時代の書物には「ひゃっきやぎょう」と書かれていたりもします。
まあ、読み方はどちらでも良いと思いますが、今回は百鬼夜行を代表とする物ノ怪やあやかしについて語っていきたいと思います。

百鬼夜行と小野篁。
実はこのふたつの関係性は深いのです。

『江談抄』という書物によれば、小野篁と藤原高藤が夜道を歩いていると少し離れた場所からモノノケの集団がやって来ることに篁は気付いた。隣を歩く藤原高藤は気づいてはいない。しかし、篁は高藤の着物に魔除けの札が縫い付けてあることを知り、あえて百鬼夜行を見せてやろうとイタズラ心に火をつけた。本来、百鬼夜行を見たものは死ぬとされているのである。百鬼夜行を見てしまった高藤は慌てたが、着物に縫い付けられていた札のお陰で助かり、それを見ていた篁はニヤニヤとしていたという。

現代風にするとそんな感じの話が残されているのです。篁、ひどいやつ。

ちなみに百鬼夜行を見てしまった時に唱える呪文があります。この呪文を唱えておけば、百鬼夜行を見てしまっても死ぬことはないとか。

それは
「かたしはや えかせにくりに くめるさけ てえひあしえひ われえひにけり」
というものなのだが、この意味がまた面白い。

漢字を入れると
「難しはや、行か瀬に庫裏に貯める酒、手酔い足酔い、我し来にけり」
という言葉になり、簡単にいえば「私は酔っ払いですよ」ということになる。

酔っ払いだから何も見ていないし、何も覚えていないんですと百鬼夜行に訴えているのだ。

そんな言い訳で許してもらえる百鬼夜行。
もし、皆さんも出会ってしまった時には酔っ払いのフリをしましょう。


妖怪というわけではありませんが、平安時代には地獄の鬼としてある動物が出てきています。
それは牛と馬です。この牛と馬の鬼は、牛頭馬頭(ごずめず)と言って、その名の通り、頭が牛だったり、馬だったりして、体は筋骨隆々な人間なのです。また虎の毛皮の腰巻きをしているのが特徴だったりします。

なお、鬼が持っている金棒というトゲトゲのついた棍棒のようなものがありますが、平安時代にはまだ存在しない武器でした。金棒が誕生したのは鎌倉時代以降で僧兵の武器だったとされています。そのため、金棒を持った鬼が描かれているのは、鎌倉時代以降の地獄絵図ということになるのです。

本作でも牛頭のモノノケというものが出てきます。実はこれ「うしあたま」と書いて「ごず」なのです。
牛頭というのは有名なところでは、牛頭天王ですね。牛頭天王というのはスサノオノミコトであり、各地で祀られている神様の一人だったりします。なお、牛頭天王信仰に関しては江戸から明治に掛けてという話もあるので、それまでは地獄の鬼である牛頭馬頭の牛頭だったのかもしれません。

牛頭馬頭を見てもわかるように、日本の代表的な動物というのは、牛と馬だったのですね。

というわけで、今回はモノノケ、あやかしについて語ってみました。


さて、そんな牛頭のモノノケも登場するファンタジー物語
「月が消えた夜に――」
https://kakuyomu.jp/works/16818622172539912659
ぜひ、一度読んでみてはいかがでしょうか?

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